本記事では、以下について解説しています。

  • 褥瘡の定義について
  • 好発部位について
  • 原因について
  • 持病によりなりやすい人について
  • 簡単な見分け方について
  • 予防と一般的な処置について

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寝たきりや長時間の臥床となった場合に一番気をつけることは、【褥瘡/床ずれ】です。病院などで定期的な体位交換や密な治療でも治癒しにくいものですが、超高齢化社会に突入する日本では、在宅で生活する人や【認知症】の方の中には、身体機能があっても活動性が低下し、在宅においても【褥瘡】に対するケアが必須になってきます。在宅専門医や訪問看護による看護師のケアがなされますが、多くの時間は家族をはじめとする介護者の努力に増々依存する形になってくると考えられます。

(※日本の介護問題については、以下をご参照下さい)

そこで今回は、【褥瘡】に対する発生理由、予防に触れて簡単に解説していきます。


褥瘡とは

褥瘡の定義について散見しますが、日本褥瘡学会では以下のように定義しています。

「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」

外力(主に体重)により、皮膚・皮下組織等が長時間圧迫されてることにより局所の血流障害をきたし、阻血性の壊死巣が生じて発生する難治性の皮膚潰瘍のことです。圧迫を受けることで皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまいます。寝たきりになっていても全く動いていないわけではなく、垂直方向の圧迫だけではなく、擦れたり、捻れたりと多方向の圧力によって、組織損傷が助長されることでさらに悪化します。一般的に【床ずれ】と言われています。

発生理由

普段私たちは、長時間座っていると殿部がダルくなったりしますが、無自覚的にお尻を浮かしたり、座り直したりして長時間同じ部位に圧迫が加わらないようにしています。また就寝中も同様に寝返りをうつことでこれを防いでいます。これを【体位変換】といいます。

何らかの理由で寝たきりになった人は、自分の意志で体位変換ができずに体重で長時間同じ部位を圧迫し、皮膚細胞に十分な酸素や栄養を送ることができないために【褥瘡】が発生してしまいます。

尿や便失禁による湿潤(皮膚のふやけ)、排泄物が付着した状態が長時間続くと、皮膚への刺激が加わり皮膚トラブルを起こします。これが【褥瘡】を助長する因子となります。

発生理由を以下にまとめました。

  • 圧迫
  • ずれ
  • 皮膚湿潤
  • 低栄養

また危険因子とされている疾患がいくつかあります。

  • 骨盤骨折
  • 糖尿病
  • 脳血管疾患
  • 脊髄損傷

引用:褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)

発生機序

【褥瘡】発生の機序として、複数の因子があります。

外的因子

  • 発汗・尿・便失禁による皮膚の汚染、湿潤
  • 機械的刺激(寝衣、シーツのしわ等)による摩擦、ズレ、損傷

内的因子

  • 基礎疾患(糖尿病、麻痺など)
  • 低栄養
  • るいそう(痩せ)
  • 貧血
  • 浮腫
  • 感染
  • 高齢
  • 動脈圧低下

内外的因子により、【組織耐久性】の低下の原因となります。それに加えて、

  • 可動域制限
  • 活動意欲の低下(精神・身体症状)
  • 知覚低下
  • 運動麻痺
  • 意識障害

上記の原因により、【循環不全】による同一部位への圧迫が助長されます。よって、組織耐久性低下と循環不全が相乗効果として【褥瘡】発生とつながります。


好発部位

褥瘡】の好発部位は、ベッドに横たわった時に圧迫を受ける部位が主です。長時間同一姿勢になると起こるため、臥位だけとは限りません。それぞれ仰向き、横向き、座位、うつ向きによっても異なってきますし、患者の体格や特徴的な姿勢によっても異なります。

一般的な好発部位は以下のように言われています。

  • 後頭部
  • 肩甲骨
  • 仙骨部
  • 踵骨部
  • 肘頭部
  • 腸骨部
  • 膝関節部
  • 外踝部(外側のくるぶし)
  • 坐骨結節部(お尻の出っ張り部)
  • 尾骨部
  • るいそうなどでは、病的骨突出部
  • 関節拘縮により圧迫されている部分

その他にも、横向きでは【耳介部】(耳の周囲)、【肩峰部】(肩の突出部)、【内踝】(うちくるぶし)が代表的です。

見分け方

褥瘡の鑑別方法には、【指押し法】と【ガラス板圧診法】があります。

指押し法

人差し指で発赤部位を軽く3秒ほど圧迫し、白っぽく変化するかどうかを確認します。押した時に白く変化し、離すと再び赤くなるものは【褥瘡】ではないとされています。

ガラス板圧診法

上記と同様にガラス板(透明プラスティック板)で赤くなっている部分を軽く3秒程圧迫します。

結果

圧迫しても消退しない発赤であれば、【褥瘡】と考えるとされています。

正確な判断はもちろん医師が行いますが、気になる場合は自宅で確認し、医師に相談すると良いと思います。

【褥瘡】の他に以下の疾患との鑑別が必要とされています。

  • 接触皮膚炎
  • 剥離時の物理的損傷
  • 低温熱傷 など

(※【創傷】については、以下をご参照下さい)

予防・処置

他の病気でも同じですが、【褥瘡】については特に予防が何より大切です。

  • 体位変換
  • 体圧分散寝具
  • 低栄養状態の改善
  • スキンケア

重度化を防止する点でも、その人らしく元気に生活する仕組み作りも重要になります。超高齢社会に向けて国の取り組みとして、【地域包括ケアシステム】があります。

(※【地域包括ケアシステム】については、以下をご参照下さい)

体位変換

体位変換の目的は、

  • 同一部位の苦痛の緩和
  • 【褥瘡】予防
  • 身体活動の障害による内臓機能低下の防止

特に【褥瘡】に関して注意されていることを以下にまとめました。

  • 体位変換は少なくとも2時間以内に行う
  • 姿勢の安定を図るために接触面積を増やす(圧力の分散目的としても)
  • 皮膚表面の通気性の確保(皮膚がふやけないように)
  • 悪化の防止(1人で体位変換の場合には、スライディングシートなどを利用して擦れないように注意する)

【体位変換】は、患者のADLを把握した上で、可能な限り自分でできる力を活かし、相手の協力を得るように心がけることが基本姿勢です。動けるのに動かない人には必ず理由があります。痛み、疲労や拘縮により動かせない、麻痺によって動かし方がわからなかったりと様々です。よって、詳細なアセスメントが必要になります。

痛みで恐怖を抱いている人の場合は、なるべく痛みがない時に、痛みを感じないようにします。拘縮で動かしにくい場合は、無理に伸ばさないようにして、不安を取り除く努力が必要になります。不安の取り除き方は、相手に問いかけ続けたり、何をするかを明確に伝えたり、触り方を工夫する必要性があります。

(※関わり方については、【ユマニチュード】の考え方をご参照下さい)

体圧分散寝具

同一部位への圧力を防ぐために、体圧分散寝具も頻繁に使用されます。

  • エアマットレス
  • バスタオル
  • ポジショニングピロー
  • クッション など

これらを使用して、体圧を分散することとより負担の少ないポジショニング(適切な姿勢作り)を行います。特に以下の注意点を重視して実施します。

  • 心地よい体位保持
  • 動きを防がない
  • 基本姿勢に近づける

低栄養状態の改善

低栄養による悪化防止と改善を目的として、栄養と水分の補給を積極的に行います。

  • 高エネルギー
  • 高タンパク質
  • ビタミンC など

できれば食事により摂取を目指しますが、サプリメントなどの補給も考慮します。もし口からの栄養補給が難しい場合は、経管栄養や点滴などにより対応されます。

寝たきりになっているので体力低下も問題となります。特に咀嚼、嚥下状態と口腔ケアについては専門家の介入(歯科など)に早期に依頼することも勧められます。

スキンケア

皮膚状態の管理もとても大切とされています。例として以下の内容を日頃から意識し、管理することがよいとされています。

  • 皮膚保護(乾燥しないように)のためのクリーム等の塗布を行う
  • 皮膚の衛生管理の為に、洗浄する。ゴシゴシ擦らないようにする
  • 石鹸を泡立てて十分に洗い流す
  • 予防のためにテープ(ポリウレタンフィルムドレッシング材)やスベリ機能つきドレッシング材などの使用

まとめ

  • 何よりも予防が大切
  • 常に感染に注意する(場合によって外科的処置が必要になる)
  • 入浴を積極的に取り入れる
  • その人らしい生活を援助できるような環境づくりは大切