本記事では、

  • 心と身体の不調和による病=心身症について
  • ヨーガが担当できる心身症の側面について
  • ストレスの種類も時代とともに変化している

ストレスと不安は現代社会の抱える課題の一部となっています。ストレスと不安は、私たちの身体と心に強く影響を及ぼし、多くの場合は負の影響を及ぼします。しかし、適度なストレスは私たちの身体にとっても、心にとっても必要な刺激なのです。

ストレスの良い影響は、私たちを行動に駆り立てるキッカケとなりますが、負の影響は怒り、拒絶、抑うつ感情などをもたらします。さらにこの感情は、頭痛や胃の不調、睡眠障害、心臓疾患等を招く可能性もあります。

現代社会はストレスに満ち溢れ、多くのストレス関連疾患がみられますが、そのうち高血圧症や胃潰瘍などの身体疾患に、心理・社会的因子が密接に関与した病態心身症と呼びます。

早めの対処が大切ですが、心身症は心理・社会的な因子と身体の問題が複雑に絡み合っているために判断が難しく、この状態が慢性化することによって複雑な問題となります。日頃から自己点検をし、身体とこころの両面からのケアが重要になってきます。

現代社会がかかえる諸問題

現代の科学技術が発達し、非常に便利になった反面、多くの問題も生じてきています。

現代増加したものと考えられているものは、

  • ストレス
  • 恐れ
  • 疲労

反対に低下/失われたとされているものは、

  • 健やかさ
  • 歓喜
  • 幸福感
  • 心の静けさ
  • 心の調和

これらの原因を私は、以下のように考えています。

物の知識偏重

意識に関する知識の欠如

科学の進歩によって、物事を本質的に観察する目が失われ、視覚的な満足を満たすものばかりを信じるようになってきたことが原因と考えられます。また、ヒトがヒトである根本的な機能である考える機会を奪い、まるで動物のように自らの欲を満たす生物になったことによる、独りよがりの考え方や欲の偏りによると考えられます。

これら問題に対して、根本的な解決策としてヨーガが適していると考えています。

ヨーガ療法については以下をご参照下さい。

現代のヨーガ療法の効果は、セラピーとして2つにわけると理解がしやすくなります。

  • 運動療法
  • 心理療法

上記のようにヨーガは、身体も心の両方を扱うことができます。手段としてのセラピーとしてはもちろんですが、物の考え方や存在としてあるべき理想形を示すことができる/目的をも含有した非常に有効なセラピーと考えられます。

また、社会構造の変化にともなって、ストレスも変化しています。ストレスの種類が変化しているのに、休息のとり方が変化していないことに私は大きな矛盾を感じています。

(※社会構造の変化によるストレスについては、以下をご参照下さい)

心身症とは

日本心身医学会によると心身症とは、

身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態」を言う。ただし、「神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する

と規定されています。

心身症とは、病名ではなく身体疾患の病態を説明するひとつの概念です。

病気には大きく分けて、身体疾患と精神疾患があります。心身症は、心理・社会的な影響に大きく関与するものの「身体疾患の中で」と記載されている通りに、身体の病気に分類されます。

心身症に限らずすべての疾患には多かれ少なかれ心理・社会的、環境的因子が関わっています。すべての疾患を身体面のみならず心理・社会・環境面も含めて全人的にみていこうとする全人的医療が現代医療のスタンダードの考え方です。

心身症とされる病

心身症と言っても、どれが当てはまるかはわかりません。いわゆる心身症としてされている代表例を以下に紹介します。

  • 循環器系:本態性高血圧、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)など
  • 消化器系:消化器潰瘍(胃、十二指腸、腸)、過敏性腸症候群など
  • 呼吸器系:気管支喘息、過換気症候群など
  • 内分泌/代謝系:糖尿病、甲状腺機能亢進症など
  • 神経/筋肉系:片頭痛、痙性斜頸、チックなど
  • 皮膚科領域:アトピー性皮膚炎、円形脱毛症など
  • 整形外科領域:慢性関節リウマチ、腰痛症、全身性筋痛症など
  • 泌尿器科領域:夜尿症、遺尿症、神経性頻尿
  • 産婦人科領域:更年期障害、月経痛、月経異常
  • 小児科領域:気管支喘息、過敏性腸症候群、神経性食欲不振症など
  • 耳鼻科領域:メニエール病、アレルギー性鼻炎、吃音など
  • 歯科・口腔外科領域:顎関節症、三叉神経痛など

引用:こころの科学 (2001年1月号) 95号

心身症の種類

心身症には現実心身症性格心身症の2種類が存在します。

現実心身症

現実に強いストレス状況がある場合。多くはストレス源である環境が改善すれば、身体症状も沈静化していきます。

性格心身症

本人側のストレス対処に問題があって生じる場合。本人の思考・行動パターンに問題がある場合が多く、自分の身体感覚や感情を自覚して言語化することが不得意といわれています。慢性化すると、自身を客観視することが不得意ですので、神経症的な不適応症状が出現せず、過剰適応となり、身体の危険信号によるブレーキがかからず、バーンアウトに至ってしまいます。

セラピーとして、以下のように分けられていますが、運動療法と心理療法的介入が可能なヨーガ療法では両者に介入することができると考えられます。

身体面:薬物治療とリラクゼーション方法の獲得

心理面:思考や行動パターンの偏りを是正する認知行動療法など。

参照:http://hikumano.umin.ac.jp/PSD.pdf

3つの性格特徴|性格心身症

性格心身症に関して、3つの性格特徴があることが報告されています。

Alexithymia/失感情(失言語化)症

自分自身の感情を客観視することが不得意で感情制御も苦手なので、感情的葛藤も言葉として表現しにくい性格と言われています。会話をしていても、自分自身の情動と表出が上手くできないため、際限なくダラダラと話し続けたりというケースがあると言われています。

(※情動:身体的表出を伴うような、一時的で急激な感情の動き)

その他の特徴としては、

  • 生活上の空想力の欠如
  • 精神的葛藤の言語化不可
  • 情動の体験と表出の制限
  • 自己感情の描写よりも、些細な事柄を際限なく描写する
  • 面接者とのコミュニケーションが困難

Alexisomia/失体感症

自分の肉体中に生じてきている諸変化に対する気づきが鈍い、もしくは全く気づけない性格。例えば、筋肉の緊張や疲労といった一般的には感じられる様な肉体中の変化を意識化できないので、過剰な負担をかけてしまいます。すなわち自己ホメオスタシス維持に必要な身体感覚への意識化も鈍いということが考えられます。

Overadaptation/過剰適応

以上の2つの性格特徴は、自分の内側に生じてきている心身反応に気づくことができないということですが、元凶と考えられているのが、過剰適応にあるとされています。

過剰適応では、自分のことよりも外部環境に生じる事に心を奪われている性格で、以下のような性格的特徴を有すると言われています。

  • 真面目
  • 仕事中毒
  • 模範的
  • 頑張り屋
  • 人から頼まれると嫌と言えない
  • 自己犠牲的
  • 良いこと表現される性格 など

これらに当てはまる方はたくさんおられると思います。しかし、問題となるのは自分の限界を理解し、身体や心からの危険信号を客観視できていないに問題となります。

治療

慢性化する前に早めに医師による診察を受けることが大切です。主に身体こころの両面からの治療が行われます。

身体面への治療

現在表出している症状に対して、各診療科で行われるような身体面からの治療が行われます。食生活や運動、睡眠などの生活習慣の乱れも症状と密接に関連するため規則正しい生活に正すために諸々の生活習慣や症状の経過などの評価のもとに実施されます。薬物療法も含まれます。

心理面への治療

心身症を対象とする介入方法は様々あります。自律訓練法やバイオフィードバックなどの行動療法、交流分析などが代表的です。その他にも音楽療法や森田療法などが行われることもあります。最近では心身医学領域でのヨーガ療法の研究が非常に盛んになり、一定の効果も報告されています。

 

ヨーガ療法では特有アセスメント方法と現代医学で行われている評価を行い、クライエントを観察していきます。

(※ヨーガ療法における人間構造論・機能論については、以下をご参照下さい)

現代医学と協力しながらも、さらなる発展をさせていくことが、今後も望まれます。

まとめ

3つの性格特徴が心身症の引き金になるということを紹介しました。しかし、あくまで性格の傾向であり、引き起こす要因なのであれば是正していくことが望まれます。その性格傾向に対抗する予防的な身体面と心理面へのアプローチに優れたヨーガ療法の効果が今後期待されています。

また今後の医療は、以下の3本柱になると言われています。

  1. 外科的手術
  2. 薬物治療
  3. セルフケア

ヨーガ療法は3番目のセルフケアを代表し、内科疾患の心身症、各精神疾患に苦しむ人々が自ら健康回復、更なる健康増進への効果的な手段になりえると期待されています。