低負荷の筋トレでしっかり効果を出す|効果的な筋トレ方法/筋トレのメカニズム

本記事では、以下について解説していきます。

  • 筋力トレーニングの効果的な負荷量や収縮時間について
  • 低負荷で効果を出すコツについて
  • 筋トレで一番重要視すべきこと

ストレッチング

健康維持の手段の一つが運動です。生涯健康で自分らしく生活していけることは、誰もが望む理想的な健康像かもしれません。しかし、近年の高齢化の課題となっているのが健康寿命の延伸です。健康寿命とは、「健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間」のことで、多くは身体的、加えたとしても精神的な健康度合いの狭い範囲での健康な日常生活を送れる期間を述べています。

(※世界基準の健康観については、以下をご参照下さい)

健康寿命の延伸を目指す上で、介護予防として地域での運動教室が盛んに行われているのはご存じでしょうか?地域包括ケアシステムの構築を政府も課題としており、システムがうまく機能するかどうかが今後の介護問題を左右するとされています。

自助・互助力をサポートすることで、上記システムを構築していこうとしていますが、決定的な欠落があるのでおそらくうまく機能することはないと個人的には思っています。

一般的なヨーガ教室や運動教室やスポーツジムで行われている筋力トレーニングについて、基本的な考え方やルールについて解説していきます。

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筋力増強の基本原則

  1. 最大数の運動単位が同時に働く
  2. 遠心性インパルスが同期する
  3. 運動単位の活動リズムが同期化する

要は、一度に参加する筋繊維数を増やすことが重要とされています。これには最大筋力に相当する負荷が必要とされています。最大筋力に満たない負荷では、全ての運動単位が参加しません。参加している運動単位が疲労すると、違う運動単位に切り替わり、長時間の活動を可能にします。

いわゆる持久力の範疇の運動ということになります。

(※運動単位(motor unit)とは、1つのα運動ニューロンとその運動ニューロンが神経支配する全ての筋線維のことを指します。 個々の筋線維は1つの運動ニューロンに支配されますが、個々の運動ニューロンは複数の筋線維を神経支配します。)

理論はそうでも難しい・・・

最大筋力発揮を求めるのはなかなか困難です。それには集中力も必要ですし、筋活動の統合も必要になってきます。また、場合によっては筋肉・関節の損傷を伴う可能性が高く危険です。

そこで、「最大筋力に近い負荷を繰り返し与える方法/等尺・等張性筋力増強訓練」が用いられています。この方法により個々の筋繊維は徐々に張力が低下し、最終的には全運動単位が参加しなければ負荷に抗することができなくなります

(※最大筋力が発揮されたのと同じ現象が起こる)

しかし、負荷が少ないと運動単位は疲労し、遠心性インパルスの同期が乱れる為、低負荷の運動は好ましくないとされています。

(※現代では低負荷でも、収縮様式や収縮時間を変更して、高負荷と同様な効果を報告しているものもあります

負荷量・時間(等尺性)

  • 抵抗量:最大筋力40%以上(効率よくするなら60%以上と言われる)
  • 持続時間:負荷量が低下するにつれて延長する。40%の負荷では20秒程度必要とされる。

(※長期臥床していた患者が立位、坐位を保つと自然とこのような負荷がかかり、筋活動に伴う局所の栄養状態の改善も相まってある程度は自然に筋力は回復していくことはあると考えられます)

等尺性筋力増強訓練の強度と時間

特徴

  • 動的トレーニングより効果は低い。
  • 運動効果も約6〜8週で頭打ち、以後順に低下(動的トレーニングで12週程度)
  • ADLへの影響は小さい
  • 筋腱移行部の伸展性欠如を原因とする拘縮の治療としては良い
  1. 熱産生がコラーゲン線維の粘性を低下させる
  2. ポンプ作用による静脈灌流が生じ、発痛物質を減少させる

負荷量・時間(等張性)

等張性筋力増強では、1RMを基準として、約60%以上が必要とされています。

(例えば.80%以上なら11回反復できない程度の運動が必要)

また、10回を超えてできる運動負荷では、筋疲労より先に精神的疲労が生じると言われており、負荷量の判定に用いるのも困難であり、避けるべきです。

RMとは【repetition maximum】の略で、頭文字からRMと呼ばれ、ある決まった重さに対して何回反復して関節運動を行うことができるかによって運動強度(重さ)を決める方法です。 1回が限界の負荷を1RM、最高5回繰り返せる負荷を5RMというように表します。

引用:RM法

1RM

一般的な筋力増強の原則

  1. 高負荷、低頻度
  2. 複数のセットで実施(1セットでは、十分な刺激量を与えるのは難しい)
  3. セット間の休憩は30〜60秒(筋中のクレアチンリン酸によるATP再合成は、30秒で約半分補充される為)
  4. 最大伸長位⇨最大短縮位に及ぶ運動にする(多くの筋繊維に刺激を与える)

(※筋力トレーニングの原理、原則については、以下をご参照下さい)

トレーニング効果のメカニズム

では、トレーニングによる効果はどのように生じているのでしょうか?いくつかの観点から紹介していきます。

  • 柔軟性改善
  • 筋力改善
  • 筋持久力改善

柔軟性の改善・関節可動域の拡大・維持

関節構成体(関節包、靭帯、筋肉などの軟部組織)の柔軟性を改善手段はストレッチングが一般的ですが、ストレッチングは関節構成体に負担を与え、損傷させ、逆に柔軟性を低下させてしまう可能性が高い為、低負荷でのエクササイズを推奨しています。もし、ストレッチングをする場合、弾みをつけず、ゆっくりとした伸長(心地よい程度)を20〜30秒保持するようにします
(※決して痛みを伴うようなストレッチングは禁忌です。損傷します)

筋力の改善

筋力は、筋肉の収縮により発生する張力のことで、筋肉の断面積神経系の活動によって成り立ちます。トレーニング初期は、神経的要素の改善により発揮される筋線維数が増加します。筋断面積の増加/筋肥大は、トレーニング開始から3〜5週以降に起こるとされています。

筋力増強メカニズム

筋力トレーニングの至適負荷

至適負荷(頻度・強度・時間)と最大筋力の30%以上で効果がみられ、60%以上で大きな効果が得られます。筋収縮時間は3〜6秒/回で10回、計60秒程度が望ましいとされています

トレーンングの強度

筋力トレーニング原理

抵抗負荷の強度によっての筋力への効果が異なります。

筋力トレーニングの原理
筋力トレーニングの至適負荷②

 20〜50回できる程度の強度の運動でも、10回するだけでも筋力増強効果はあるとされる。

反復回数とRM

全身持久性の改善

  • 最大酸素摂取量の50〜80%、3〜5日/週、15分〜60分/日の運動。
  • 最大酸素摂取量60%前後とは、運動の主観的・心理的尺度のBorg指数の12〜13程度。
  • 筋持久力の増強は、最大筋力の20〜30%の運動強度で、高頻度の運動を推奨。

主観的運動強度|Borgスケールとは

主観的運動強度(ボルグスケール)を用いることで、個人の体力、環境、全身疲労などの要因を考慮し、運動者が運動中における自分の感覚を主観的に評価することができます。

運動時に感じる強度≒身体に起こる生理的反応の強度」(身体が感じている運動強度を知ることで、心臓が働いているレベルを知ることができる)

6~12までの15段階で表され、心拍数の目安とされています。

(※この点数の10倍の値は運動時の心拍数とほぼ一致します)

例えば、13(ややきつい)が最大心拍数の60%、15(きつい)が85%に相当するとされている。

borgスケール

目標心拍数の求め方

{(220-年齢)-安静時心拍数}x運動強度(%)+安静時心拍数

例:「50歳」、「安静時心拍数60回/分」、「運動強度60%」の場合

{(220-50)-60}✕60(%)+60=126回/分

「126回/分」が目標心拍数となります。

運動強度の目安

  • 運動習慣が全くない人,低体力の人,高齢者などは40%程度
  • 中高年者,肥満者などは50~60%程度
  • 運動に慣れている人は60~70%程度

上記を参考に設定することが望まれます。

(※強度を上げすぎると無酸素運動の域に入ってしまうので注意が必要

トレーニング頻度と効果

トレーニングは、毎日強い強度で実施すれば良いというわけではなく、推奨される頻度、セット数があります。

  • 1回/2〜3日=1〜2回/週の実施で効果があるとされています。

しかし、高齢者の場合は、負荷量よりも継続性を重視していくことが望まれます。

筋力トレーニングのポイント(対象:健康成人)

  • トレーニング部位は上下肢・体幹を含め5〜10ヶ所程度
  • 最大筋力1/3〜2/3で5〜10回、3回/週が理想的
  • 予測最大心拍数60〜70%で行う

(※高齢者の場合、疾患のある場合は別です)

(※トレーニングの中止基準については、以下をご参照下さい)

まとめ

現代の一般的な筋力トレーニングの基礎を解説しました。しかし、高齢の方には軽負荷・高頻度が一般的になってきていますが、若い人では依然として高負荷トレーニングが処方されています。アスリートなどの特殊な目標を持っている人は例外ですが、若年者であっても低負荷・低頻度でも持続時間やスローエクササイズのように収縮速度や様式をコントロールすることで効率的な運動を提供することもできます。

  • 負荷量よりも、収縮様式や時間を変更することで効果を出せる
  • 何よりも優先すべきは継続すること
  • 運動の効果は、継続の上に成り立ちます。