人のとる行動を内外環境による【刺激】と【行動】の観点から観察してきました。行動が出現する前には【行動】への【先行刺激】が存在し、【行動】に続く【後続刺激】がさらに【行動】へと働きかけます。
【先行刺激】、【行動】、【後続刺激】の関係性がどのように働いているか、【行動】がどのようになっているかを詳しく分析することをABC分析といい、適切な刺激と行動の繰り返しにより、行動がより安定して出現するようになってきます。
ABC分析については、以下ご参照下さい。
目的に適う行動を生みだすには、分析に基づいてターゲット行動を定め、行動レパートリーを拡大します。行動レパートリーが出現されたら、行動の自発性獲得へと介入していきます。
自発的な行動形成をしていく為に先行刺激について知り、調整して与えていく必要性がありますので、行動形成のための先行刺激について考えていきます。
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プロンプト・フェイディング法
正しい行動を生じさせる為にはじめは行動のヒントや手助けが必要になってきます。
正しい行動を確立する場合、様々な手がかりやヒントとなる刺激(プロンプト)を与え、行動を確実に引き出していきます。そして徐々にそのプロンプトを減らしていくことで、先行刺激に頼らない自発的行動の定着を図っていく方法をプロンプト・ファイティング法といいます。
適切な行動生起がなければ、すぐに強めのプロンプトを与え、行動全体が流れるように調整していく必要性があります。
適切な行動については、行動レパートリーの中にあるという前提です。適切な行動が出現した場合に意図的に後続刺激/強化刺激を与え、行動形成をしていくのがここでのアプローチですが、行動への意味を知り、出現した行動が客観的な視点では意味があっても、主観的に行動主が無意味、失敗だと感じてしまえば一般的な強化刺激も効果的には働きません。
よって、プロンプトについても無誤学習で進めていく必要性があると考えられます。
課題へのプロンプトも様々あります。
身体的ガイド
直接身体的に手助けするプロンプトのこと。身体ガイダンスとも呼ばれ、例えば、先生が子どもの手を持ち適切な動きができるように誘導して習字をするなどです。もし動きが滞れば、少し動きを誘発し(介助刺激)、文字を完成させていくやり方。
視覚的プロンプト
漢字練習帳の薄い線、点線など行動をわかりやすく見通しをもたせたりする。
言語的プロンプト
思い出せない言葉の頭文字を代わりに発音して滞ってしまわないようにします。教示,ルール,説明,ヒント,助言,質問,その他の言語的な援助も含まれます。
モデリング
まわりの人の行動をみて、模倣するように促す技法のこと。モデリングによって適切な行動出現が認められない場合は、身体的ガイドを与え、徐々にプロンプトを減らしていくなど様々なプロンプトを利用していきます。
時間的遅延法
行動レパートリーが獲得されたら、行動が自発的に出現するようにもっていく技法として、時間的遅延法があります。
適切な自発的行動が出現するまで、5秒、10秒などの短い時間を指導側が働きかけを行わないで待ちます。そして行動が出現しない場合、プロンプトを与え、プロンプトがなくても行動が出現するようにしていく方法です。
無誤学習/errorless learningからはじめる
プロンプト・ファイティング法と時間的遅延法は無誤学習を進めていくための技法として重要な方法になります。
指導初期は誤反応が出ないように十分なプロンプトを与え、安定してきたら、徐々に減らしていきます。誤反応の少ない状態で学習を進める方法で、嫌悪刺激が与えられると自発性は抑制されますので慎重に行っていきます。
どこまで学習したらいいか見通しがつかない場合は挫折感を味わいやすい状態です。よってプロンプトに少し道筋をみせ確実に行動を遂行することで、目標がわかり、また達成感を得やすくなります。これが強化刺激となるわけです。
困難な場合は、すぐにプロンプトを与えてもらえるので、余計な不安、緊張、いらだちがなく、安心して学習に取り組むことができる環境づくりとも捉えられます。
試行錯誤学習法
誤反応や正反応を繰り返すことで、正しい反応に徐々に到達する指導方法です。この方法は、あらかじめ正反応や適切な反応が行動レパートリーとしてある場合に有効な方法となります。しかし、欠点もあります。それは、誤反応の場合に誤りであることをfeedbackすることになる、負担の大きい方法とも言われます。
例えば、
80%正解、20%が誤り。負のfeedbackは20%であるので、意欲は減少しにくいと考えられますが、50%/50%の場合は、意欲低下する可能性があります。
初めは【無誤学習】によって必要な行動レパートリーを獲得させ、その後、【試行錯誤学習】としていくのが、効率的な介入と考えられます。行動主の性格特徴などを加味して、決められた時期というのはありませんので、いくつかの判断基準を持ち合わせておくことがセラピストとしては必要です。
まとめ
行動レパートリーがあっても、行動する意図が必要です。自発性のなければ、誰かが常に肩を押したり、ヒントを与え続ける必要があるので、自立した個人として主体的な行動とはなりません。
・失敗すれば意欲は減退する
・初めての行動出現にはヒントが必要
・あくまてセラピストは支えるだけで、意思によって選ぶのは行動主
・適切な環境づくりは準備でできる