本記事では、以下について解説しています。
- 食事と心の関係性について
- 食事のとり方が心へ与える影響について
- 心の3性質がとりやすい食事の傾向について
【プラクリティ】を構成する3つの心のエネルギーを【トリグナ】といいます。それぞれの徳性には良い面と悪い面があり、何よりもバランスが重要とされています。バランスを保ちつつ【サットヴァ優位】が理想的であるとされています。
(※【トリグナ】については、以下をご参照ください)
プラクリティ/根本原理】は、トリグナのバランスが崩れると心や運動器官に転変し、人の性格を決定する因子であると理解されています。
(※【プラクリティ】については、以下をご参照ください)
このトリグナのバランスを保つ方法として、社会生活における自己制御とサトヴィックな食事法を行うことの重要性になってきます。
今回はサトヴィックな食事について、各グナに由来する食物を紹介していきます。
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食事の重要性
生活をしていく基本として日本では古くから【衣食住】という言葉があり、生活の基礎とされています。しかし、個人の嗜好で大きく異なり、現代は個人の自由で好きなものを好きな時に食べることができます。その影響と考えられる病である【生活習慣病】も増加してきました。
健康を保つ秘訣は、適度な食事と運動です。肉体を作り上げる基礎の食事は、特に気を使われるべきです。心の乱れが肉体に影響するように、肉体の乱れが心にも影響すると考えるのはごく自然なことです。【ヨーガ】では、一番扱い易い粗雑体である肉体をコントロールを目指します。肉体のコントロールができると心のコントロールもしやすくなるからです。
【人間五蔵説】や【人間馬車説】において、【理智/ブッディ】は【マナス/意思】を介して各運動・感覚器官からの刺激を受けているわけですから、肉体を善く保つにも食事に注意して生活するのは当然なことです。
(※人間五蔵説・人間馬車説については、以下をご参照ください)
ヨーガ的な食事法
では、ヨーガで勧められる食事法とはどのようなものでしょうか?
食事、睡眠、労働、そしてレクリエーションが適度にとれる習慣のある人はヨーガを実習することによって、全ての物質的な痛みを和らげる
【バカヴァットギーター Ⅵ−17】
適度な食事と運動、そして休憩や睡眠が必要なことはごく一般的に言われています。まるで自分が機械であるかのように仕事依存にはならずに何においても適度に保つことの重要性が語られています。
肉体と心は食物によって造られるのであるから、穏やかで善性優位の食物は肉体を健康にし、心に調和をもたらします。
ヨーガに適している食物
- 穀物
- 豆
- 果物
- 野菜
- ナッツ
- 種子
- 乳製品
いわゆる自然なものを摂取するような菜食主義を推奨しています。
食事とトリグナ
心は、食物の微細な要素によって作り上げられ、清浄な食べ物は強い心と精妙な理智を育みます。この自然界は全て3つの質に分類できると考えられています。これが以下の3つの質です。
- サットヴァ(純粋性)
- ラジャス(動性)
- タマス(惰性)
人間の心の状況や判断の仕方は、好んで食べているものから判断することができます。普段自分が好んで食べているものが、自分自身を表しているということです。
- いつも辛いものや刺激物ばかり食べてしまう (ラジャスな心)
- ジャンクフードや大量に飲酒をする (タマスな心)
心が身体に害のあるものでも「それが欲しい、必要だ」と【判断/誤認知】してしまいます。強烈で【動性優位の食物/ラジャシックな食物】は、人間を邪悪にし、心の落ち着きをなくさせます。【サットヴァ優位】になると身体に良い影響を及ぼすものを摂取するようになります。よって、食べ物の選び方が変わると心やスピリチュアルな純度にも影響すると考えられます。
サトヴィックな食べ物
寿命を延ばし、勇気、活力、健康、幸福、喜びを増大させ、口当たりがよく、美味で、滋養に富み、気持ちのよい食物は善性優位の者に好まれる
【バカヴァットギーター XVII−8】
経典に示されている通り、【瞑想】に備えた適切な食事という観点からも非常に重要な食物とされています。
サットヴァな食べ物の条件
- 新鮮で自然なもの
- 衛生的
- 好みにあった食べ物
- オーガニック育ち
- 遺伝子組換えのされていない
- 出来る限り保存料や食品添加物のついていないもの
効果
- 心を清浄させ、穏やかにする
- 人を平静にさせ、知性、記憶を向上
- 精神集中力の向上
- 内面の幸福の増大
代表的な食物
- 精製していない米
- 穀物
- 新鮮な野菜
- 牛乳やヨーグルトなどの凝乳
- バター
- ギー(精製バター)
- ゴマ油
- アーモンド
- ココナッツ
- 新鮮なフルーツ
- ドライフルーツ
- はちみつ
上記が代表的なものですが、共通していることは、栄養分に富んで消化しやすく、十分な【生気/プラーナ気】を含んでいるものです。
(※プラーナについては以下をご参照ください)
これらの食物は、人間に必要なバランスのとれた栄養素を供給します。
- タンパク質
- 炭水化物
- 脂肪
- ミネラル
- ビタミン
また体内の【消化作用】を助け、腸の【蠕動運動】に必要な繊維分を供給します。
ラジャシックな食べ物
苦く、酸っぱく、塩辛く、過度に熱く、刺激的で、油気がなく、ひりひりし、苦痛と憂いと病とをもたらす食物は動性優位の者に好まれる
【バカヴァットギーター XVII−9】
活動的で感覚器官の働きに従うように生きる人たち(ラジャシック)は、これらの刺激物を好みます。
善性優位な人が、ゆっくりとほどほどに食べるのに対し、
動性優位な人は、勢い良く感覚器官が満足するまで食べ、消化不良によって身体へ負担をかけます。
食物を過度に熱することで、本来持っている栄養素を失ってしまいますし、繰り返し使用による酸化した油で調理した食物が体内に入ることは、有毒物を摂取するのと同様ということです。
条件
- 過度に辛く
- 酸っぱく
- 塩辛く
- 口の中を焼くような刺激が強いもの
- 油気がなく
- ヒリヒリした苦痛
影響
- 消化不良
- 生理作用を乱す
- 不眠
- 疲労
- 感情的緊張
- 肥満
代表的な食物
- 様々な香辛料
- 肉類
- マスタード
- ニンニク
- 玉ねぎ
- 酢
タマシックな食べ物
新鮮でなく、味もなく、悪臭がし、腐っており、食べ残しで不浄な食物は暗性優位な者に好まれる
【バカヴァットギーター XVII−10】
【暗性優位な者】は、善性・動性優位の食物は好みません。
条件
- 腐らせた物
- 発酵させたもの
- 消化の難しいもの
- 過剰に精製してあるもの
影響
- 無気力
- 推理力の低下
- 怒り
- 嫉妬心
- 貪欲
- 感覚を鈍らせる
- 惰性を増加させる
代表的な物
- アルコール
- タバコ
- 保存食品
- レトルト食品
- 作り置きの食品
- 腐った食品
- 油分の多い食品
まとめ
- 心身は食べ物からできているので、食事の影響は考慮しつつ、良質なものを選んで食べる
- ラジャス、タマスな食物が絶対的にいけないというわけではなく、バランスを保つことが重要
- 何気なく選んでいる食べ物の特徴を観察することで、心を観察することもできる
- しっかりと栄養を摂取する、味わう、感謝することを意識しながら食事をすることで新たな発見がある
- 食事が調整できれば、適度な運動が大事
- 【ラジャス】【タマス】気質にもポジティブな側面があることは忘れてはいけない