医療技術の進歩で平均余命は伸びましたが、現代課題とされているのは健康寿命の短さです。個人がその人らしく活き活きと生活していく為には、この健康寿命の延伸が1つの指標となるのは言うまでもありません。その人らしく生きるコツの1つの条件が健康です。

後期高齢者における介護が必要になる主要因としては、高齢による衰弱(フレイル)、転倒・骨折、認知症が挙げられています(前期高齢者では脳卒中が主要因)。特に高齢による衰弱と転倒・骨折の割合が大きく、75-79歳で介護が必要になった方の約20%、80ー84歳では約25%、85ー89歳では約40%、そして90歳以上では約60%もの割合で、運動機能の衰えが日常生活の自立を阻害する因子になっています。

今回は、近年の高齢化の進行により注目されてきたフレイル、サルコペニアといった病態について解説していきます。

サルコペニアとは

加齢および活動性低下、悪性腫瘍、臓器不全などの疾病、低栄養などの原因により骨格筋量の減少かつ筋力、身体機能低下を起こした状態のこと。

サルコペニアの原因

加齢とともに筋肉の量が減るのは当然と思われるかも知れませんが、実はそんなことはありません。適切な対策をとることによって、予防や改善が可能となります。体内で成長ホルモンや性ホルモンが豊富な状態であれば、筋肉は大きくなりやすいと言われています。しかしながら、この成長ホルモンや性ホルモンは加齢とともに大幅に減少することが分かっており、さらに加齢とともに筋肉を分解してしまう物質が増えてしまうことも分かっています。

つまり、何も対策をとらなければ確実に筋肉は減少してしまうというのが高齢者の実態ということになります。ただし、最近の研究によって“運動”をすることによって、たとえ後期高齢者であっても成長ホルモンや性ホルモンが増加し、筋肉量が増加することが分かってきています。そして、この“運動”の効果をより高めるためには“栄養”も重要な役割を担います。運動に合わせてしっかりと栄養を摂るということが、とても効果的なサルコペニア対策になるということです。

一般的な筋力減少の過程

筋力のピークは20~30歳代でその後は徐々に低下し、50歳以降毎年1~2%程度筋肉量は減少すると言われています。さらにベッド上安静においては、筋力は1日1~2%、筋量0.5%程度減少すると言われています。(1日安静で、1年分の筋力が失われるということです)
また低下した筋力回復には、「少なくとも廃用状態に陥った時間と同等〜2倍ないし、それ以上の期間を要する」とされています。

どんな運動がよいのか?

「どんな方法でもよいのでまず体を動かす」ことです。できれば軽負荷での運動をおススメしています

運動を選ぶときに考慮するべき5条件

上記でまず運動習慣を作るまたは、若いことから継続した運動の趣味をもっていることは大切です。リタイア後の趣味のない男性の場合、女性のように地域での関わりがないことが多く、家で引きこもるケースも多々あります。特に仕事一筋でずっと働いてきた方に多いとも言われています。

効果的な方法を実践することは大切なのですが、まずは手段ではなく、継続した運動をして自らで健康維持を行うという目的を優先するということです。よって、以下の5条件に当てはまる運動であればいいのではないかと思います。

①いつでも ②どこでも ③誰にでも ④毎日  ⑤継続

高齢者に対する筋力トレーニング

高齢者への高負荷(最大の60~80%)の筋トレの場合、一時的な血圧上昇や軟部組織損傷、病気(炎症性疾患等)によっては筋力低下を招く危険性もあります。2016年に報告されたメタ解析の結果,高齢者対象の場合には,高負荷トレーニングでも低負荷(最大の40~50%)でも骨格筋機能に対する効果には差がないことが示されており,重要なのは仕事量(負荷量*量)であるとまとめられました。つまり、回数や頻度等の設定次第で高い効果も期待できるということが示されたということです。近年では低負荷・低速度での運動効果についても多数報告されています。

現状、筋力向上には過負荷の原則が適応されるのは変わりませんが、高齢者においては上記のような効果も期待されているので、個人的には低負荷で持続時間やスピードを変更し、神経系メカニズムによる筋力向上を期待して実施しています。

筋力維持に必要な運動量

3METs以上の活動が15~20分。歩数で言えば4000~8000歩程度

3メッツの活動例

軽い筋トレ、床掃除、子どもの世話、普通の歩行、荷物の上げ下ろしなど

筋力向上だけではADLは変わらない

重要なのは筋力向上そのものではなく、生活するために必要とされる筋力が十分備わっているかどうかという点です。筋力は使わないことによってトレーニング前の状態に戻ります。短期間の入院により歩行困難となる高齢者の背景には、この影響が大きい可能性が高いと考えられます。

筋肉のタイプは2種類あり、トレーニング方法により鍛えられる筋肉の部位と種類は異なります。(特異性の原則)デイサービスなどで同じマシントレーニングを繰り返していてもADLが変化がない理由がここにあります。特にフレイルやサルコペニア高齢者では、筋力は改善しているが,骨格筋量は減少しているという状況に陥り易いと考えられており、個人の背景までを考慮して運動プログラムを立てることは正直通所施設では困難であり、個人指導でもお金がかかります。

よって、自分で簡単な全身運動を継続していくことが大切です。

具体的な参考になる運動は?

ウォーキング、自転車こぎ、スクワットなどの自重運動です。これは運動を選ぶ5条件に当てはまります。より簡単な運動を日常生活の中に含める工夫が継続のポイントです。

 

まとめ

・なんだかんだで運動は継続が一番

・健康にいるためには自助力を自ら高めていくことが大切

・よい目的をもつことは、よい方法で行うことと同様に重要

 

引用・参照

1)日本サルコペニア・フレイル学会雑誌Vol.1 No1 2017より引用
2)Skelton DA Greig CA, et al : Strength, power and related functional ability of healthy people aged 65-89 years. Age Ageing. 1994 Sep;23(5):371-7.
3)リハビリテーション実践ハンドブック S.J.ギャリソン/著 石田暉ほか/監訳 シュプリンガー・フェアラーク東京 2005
4)谷本芳美、渡辺美鈴・他:日本人筋肉量の加齢による特徴、日老医誌、47:52-57,2010.
5)Csapo R, et al. Effects of resistance training with moderate vs heavy loads on muscle mass and strength in the elderly: A meta-analysis. Scand J Med Sci Sports 26: 995-1006, 2016