運動は高齢者の運動能力・ADLの維持・向上させるだけでなく、精神機能にも効果があります。身体機能の脆弱化により、筋肉、関節等を痛めてしまう可能性がある為に運動処方には細心の注意が必要となります。一度痛めてしまうと運動再開が困難になるケースも少なくなく、指導者として信用も失う可能性があります。運動を処方する際も当然アセスメントを実施すると思いますが、事前の説明と同意を取りつけることは当然のことですが重要なこととなります。
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適切な運動プログラムを構成するために
計画的に介入するには、3〜6ヶ月を1期間として考えて介入していきます。その前後でメディカルチェック、体力測定などの評価を行い、介入効果の判定はできる限り行います。
それぞれの時期により付与しておくべきこと、注意点があります。
コンディショニング期
動機づけ、知識付与し、低負荷、高反復の運動により筋・関節を徐々に慣らし、基礎的な身体の使い方を習得していきます。
20〜30回を「楽」に行えるぐらいの運動強度でゆっくりと身体を慣らしていきます。
筋力向上期
運動機能向上を目的に、高負荷、低反復で実施していきます。
運動強度は最大筋力20〜50%を目安に10回/1セット✕3セットの実施を推奨。
機能的運動期
筋力強化を継続し、ADL、余暇活動などに必要な複雑な動きを想定し、日常生活動作向上を目的として介入していきます。
10回/1セット✕3セットで主観的運動強度で「きつい」程度の強度での実施を推奨されます。この時期にはより日常生活での般化を考慮して、筋力強化・balance運動要素・俊敏性要素を取り入れリズミカルに実施していくことを推奨されます。
運動前の確認事項
筋力をつけるため、健康促進するために運動しているのにそれでケガをしてしまってはいけませんし、ケガを負わせるのは専門家としてはあってはならないことです。プロとして最低限守らないといけないのは、現状よりも悪化させない意識は必要です。
残念ながらどれだけ注意をしても運動をする以上、防ぐことはできないアクシデントもあります。0にすることは不可能ですが事前準備で防げるものは0にしなければいけません。簡単な注意事項を記載します。
内科的Check
運動により特に強い負荷を受ける循環器系の確認は必須になります。
・高血圧・心不全の既往
・胸痛や動機、息切れなどの自覚症状
・服用している薬の有無と種類
外科的Check
運動器疾患の確認、身体機能の把握をして上で運動強度・種類を決定していくために必須です。
・運動器疾患
・骨粗鬆症の有無
・疼痛の有無、程度
・手術の有無と種類
・服薬
運動能力Check
個人の身体的な特徴や性格特徴(頑張りすぎる性格など)、運動機能評価としての一般的な評価を実施する。効果判定にも使用できるスケールを活用していきます。専門家が対応することになると思われます。
・筋力(握力、膝伸展筋力、周径など)
・バランス(FR、SLSなど)
・移動能力(gait speed、TUGなど)
・ADL(FIM、BIなど)
体調Check
介入中の確認、開始前もですが、終了時も確認することが理想的です。
・顔色や自覚症状
・睡眠、食事状態
・前回実施後の疼痛や自覚症状出現の有無
・血圧、脈拍、体温
※トレーニングの中止基準について
以下参照下さい。
まとめ
・運動にはリスクはつきものですが、可能な限りリスクを抑える工夫は必要です。それには徹底した準備で可能となることがありますので、知識に基づいた準備と現場での観察する目を鍛えていきましょう。