認知症者へのユマニチュードの効果|心を伝えるケア/基本態度

 

触れ合うケア

認知症者が増えるなか、介護施設または在宅において難しい局面を迎えています。今後多くの高齢者を在宅で看ていくことが国の方針であり、支える側のさらなる努力が必要となってきます。

医療を提供するには、”相手が理解納得して自ら選ぶ”ことが基本とですが、そのケアに対しても認知機能低下により、自分の為に必要なことであるということが理解できない対象者の場合には、ケアに抵抗され、十分な質のケアが困難になることは珍しくありません。

介護者も患者や利用者の為にやっていることだけれども、抵抗された結果、「いったい誰のためにやっていることかがわからなくなる」ということをよく伺います。しかし、このような状況下に、

  • 何を
  • どのように行えば良いのか

手段を具体的に学ぶ機会は限られており、現場で困難に直面した本人の経験や資質に依存した取り組みになっています。

そこで認知症の方と接する基本的態度として有名な「ユマニチュード」を以下を中心に紹介していきます。

  • ユマニチュードの基本的態度について
  • 3つの段階、4つの柱、5つのステップについて
  • 現場での問題点と解決策
  • 認知症に限らず、日常生活でも役に立つ方法について


認知症への理解

認知症の進行に伴って記憶障害、失認、失行などの中枢症状だけでなく、BPSD(徘徊、暴言、暴力、不安、睡眠障害)が合併するようになることがあります。その場合、本来必要とされる医療、技術、ケアが多数あるにも関わらず、本人の拒絶により困難となっている機会が多くなってきます。

ユマニチュードとは

ユマニチュードは「相手に優しさを伝えるケア」と呼ばれています。

高齢者、特に認知症の方に有効だと言われるケアメソッドのユマニチュードは、現場を変える新たな認知症ケアとして期待されています。

ユマニチュードは、2人のフランス人(GinesteとMarescotti)が病院や施設で援助を必要とする人々に行ってきた30年以上にわたるケア実践の経験から生み出した技術を、「ケアをする人とは何か?」「人とは何か?」を問う哲学と、「言語」「非言語」によるコミュニケーション技法に基づいた方法です。

  • 3つの段階
  • 4つの柱
  • 5つのステップ

以上から成り立つ誰もが学びやすく、具体的な日常ケアのなかで実践できる極めて実践的な技術であるとされています。

(※言語、非言語コミュニケーションについては、以下をご参照下さい)

困難に直面している高齢者ケアに光を与えるだけでなく、ケアワーカーのバーンアウトを防ぐなど、ケアを受ける人、行う人双方に「大きな変化」をもたらすとして注目を集めています。

理念

まず大前提となる理念を示します。

「ケアを受ける人のもつ能力を奪わない」

「何でも代わりにする」という一見すると「親切なケア」、別の観点からみると「お節介」とされるものとの決別を宣言することを意味します。また、人の尊厳を保ち、ひとを「ヒト」として、また人間として扱うとても基本的な接し方です。

ユマニチュードについて調べている方は、自分のケアが「つい流れ作業の介助となってるのでは?」と疑問に思ったこともあるのでは?と思います。自分のケアは適切なのかと真摯に相手と向き合っているからこそ生まれる疑問であり、人と人との関わりではなく、仕事として割り切っている人には疑問にもならないことです。その真摯な想いは伝わります。自問自答しながら、相手のことを観察することで積み重ねていくことも非常に大切です。なぜならセオリーがあっても、相手は人であるからです。

観察する能力

ケアを提供する側が受ける側の能力に応じた正しいレベルのケアを提供できているかを常に評価し、その評価に基づいたケアを実践することが重要です。医師が診察で何の評価もすることもなく、治療方針を決めたり薬の処方をすることはありません。

リハビリテーションにおいても、問診等において目標設定、評価もなしにリハビリテーションを開始することはありません。以上のように一定のアセスメントの上に成り立つセラピー的要素も含んでいる接し方と理解することもできます。「能力に応じる」ということは、症状への正しい理解と捉え方を改める必要があります。

介護現場で働く多くの方は最低限の教育は受けていますが、医学知識水準は個人間で大きな差があります。医療従事者の場合は、国家試験をクリアしなければいけませんので、極最低限の医学知識はありますが、知識・技術・経験の差は、介護現場の方と同様に大きな差があります。

患者の回復の為に必死で日々研鑽している理学療法士もいれば、お仕事としてやっているいわゆる職業セラピストと2極化しており。患者側に担当者の選択肢は実際はほとんどありません。ギャンブルと同じですよね。

今後は選ばれる職業となりますが、現時点では人不足ですので、漫然としていても働ける職業であるという危険性があります。これはケアワーカーも同様のことかと思います。

ユマニチュードの3段階

  1. 回復を目指すケア
  2. 現在の機能を維持するケア
  3. 最後まで寄り添うケア

繰り返しますが、「ケアを受ける人のレベルに合わせて選択する」ということが基本です。例えば、座位保持可能な人に対して臥位のままの清拭をするケースは、相手の能力を奪っているということになります。この話をするとよく「限られた時間の中で、時間をかけられないから無理だ」という答えが返ってきますが、少しでも理想的な状態に近づけることはできないかと「考える」努力はできると思います。まず相手のことを考えることです。

もちろんその日の状態によっては臥位かもしれませんが、「その日の状態」に関して、主観的な評価だけで判断はしてもいいでしょうか?人はついつい自分の都合の良い方法にバイアスがかかってしまいます。自分が楽だからという「我欲の為にやっていないか?」と建設的な自己否定をしていくことは重要だと思います。

「今日はしんどいから座りたくない」と言われたとして、その意図と行間に隠れた言葉に意識を向けてみると、「今日はしんどいから(あなたの指示では)座りたくない」という伝えている可能性があります。これはこれまでの関係性の問題です。日々の自分の行動の積み重ねが関係性を作り上げていくので、自分の行動を観察し、律する心をもつことは非常に重要だということがわかります。

行動には意図がある

人の全ての行動には、言語的・非言語的なメッセージが含まれています。またコミュニケーションにおいて言語の占める役割は7%程度だとも言われています。これは「メーラビアンの法則」と言われるものです。

非言語的メッセージを感じとる、察知するというスキルは日本人は非常に得意です。海外の人には理解されにくい「以心伝心」という言葉があります。

「言葉によらずに、互いの心から心に伝えることや言語では説明できない深遠・微妙な事柄を相手の心に伝えてわからせること」という意味で、日本固有な概念であると言われてはいますが、そんなことはなく同じ文化圏同士なら認められるものです。

しかし、人とのコミュニケーションを不得意な場合は、「相手がどんな表情だったのか?」「どういう態度だったか?」という非言語表現を認識できていないことが多いとされています。言葉だけで理解しようとするのではなく、相手が表現したものに対しての感度をあげていくことが必要であるということです。


どの視点から看るか

どの段階の観点から考えるかで「正しいレベル」かどうかは異なってきます。

基本姿勢は、「相手の尊厳を保つ」ということです。リハビリテーションにおいても、大きく4つの段階があります。

  • 回復を求める:医学的リハビリテーション
  • 生活を支える:生活リハビリテーション
  • 症状緩和を目的:緩和的リハビリテーション
  • 健康増進・予防:予防的リハビリテーション

緩和ケアの観点から考える

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティー・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善するアプローチである。

WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002年)

 

「死を迎えるまでその人ができる限り積極的に生きていけるように支える」と捉えると、たとえ終末期でも「一方的に何でもする」ケアは、相手の尊厳を保つために相応しいケアとは言えません。「いま、この人に必要なケア」について常に考え、実践していくことが重要となります。

現代ではQOLからQODという概念があります。

ある一定の段階になると人は死について考えるようになります。

死について肯定的にみるというわけではありません。本人の捉え方を尊重して、死の観点から心理的に支える必要性があるということです。

基本事項

ユマニチュードにおいて、「あなたは大切な存在である」ということを伝え続けることが基本態度です。

どんな気持ちでも相手に受け取ってもらえなければ意味がありません。また相手を「自分の意図通りに動いて欲しい」というメッセージを送っても相手には伝わりません。これは支配下構造を築こうとする行為となり、相手からの無自覚的な抵抗を受けることになります。

あくまで「相手の関心に自分の関心を向ける」姿勢は、コミュニケーションの基本中の基本ですが、かなり自己理解をしなければ、自分の関心事ばかりのケアとなってしまうので注意が必要です。

言語的・非言語的コミュニケーションで「あなたは大切な存在である」という想いを伝え続けますが、具体的にどんな方法があるのでしょうか?

以下にユマニチュードで重要とされる4つの柱、ケアを行う5つのステップを紹介していきます。

4つの柱

見る

相手を「水平の目の高さ」、「正面」から「近く」「長く」見ることで、相手に与えるメッセージはポジティブな意味を示します。

  • 水平な目の位置:平等性
  • 正面からの視線:正直さ、信頼性
  • 顔を近づける:親密性
  • 長く時間をとる:友情・愛情

これとは逆の意味を含有する態度があります。

  • 上から見るような垂直な視線:支配
  • 横や斜めからの視線:攻撃性
  • 遠くからの視線:関係性の希薄さ、否定的な意味
  • 僅かな時間しか見ない:恐れや自信のなさ

あくまで相手の背景を考えて評価した上で実践することが望まれます。

日本人はアイコンタクトが苦手

文化的背景によらない比較研究において、

  • 正面からアイコンタクトをとると覚醒度や注意力が高まることが報告されている

精神疾患患者においても、アイコンタクトを近い距離から取りながらコミュニケーションを行うことで、善い関係性を結ぶことが可能と言われているが、疾患の種類と程度によって異なるため、個別に適切な距離を探ることが重要です。

話す

話すことに関しては、以下が重要とされています。

  • 低めで落ち着いた「声のトーン
  • 前向きな語彙を駆使する「言葉の内容
  • 途切れなく話す

認知機能低下や言語コミュニケーションに何らかの困難さを抱えている方の場合は、すぐ返事が帰ってこない場合もあります。相手からの返事がないから、こちらも声掛けをしないのであれば、相手は自分にとって「存在していない」と伝える非言語的メッセージとなる可能性があります。

相手からの反応がなくとも、ケアの現場に言葉を溢れさせることは重要です。言葉のシャワーとも言われますが、これも状況によっては控える場合もありますのでご注意下さい。感情を共感する場合は言葉は、意味を持たない場面は多々あります。ただ横にいることだけで良いこともあります。

言葉を紡ぎ続ける技術/オートフィードバックと呼ばれる重要な技術です。まるでスポーツキャスターが実況するように話をし続ける重要性ということが言われています。

オートフィードバックの重要性

話すことに困難感があり、反応があまりない患者さんに対しては重要とされています。

  • 患者側が「今自分が何をされているのか」
  • ケア側が「あなたの反応をどのように受け取っているのか」

できるだけ前向きな言葉で伝えることは大切です。

  • 「次に何をされるのか」
  • 「どうなるのか」

歯科治療を思い浮かべて頂くとイメージしやすいですが、何をされるのかわからなければどんな人も自然と心身ともに緊張してしまいますよね。不用な緊張は、適切な処置を阻害する要因となるので、可能な限り抑えるべきです。

そんな時には、

  • 「足を持ち上げますね」
  • 「血圧を測りますので、腕が少しずつしまっていきます」

このような言葉を常に相手に伝えることで、決してとして扱っていないと伝える技術です。

患者側が、そこまで丁寧に扱ってくれていると思えることで、関係性も構築されます。常に相手の立場に立って考え、実践することの重要性が提示されている技術です。


触れる

「見る」、「話す」よりもハードルの上がるのが「触れる」ケアです。ここまでで最低限の関係性が築けていなければ触れることは拒否されます。

ボディタッチは人間関係を築くことに有効とされていますが、以下の条件は重要視しておいかなければなりません。

  • 触れる部位
  • 触れ方
  • タイミング

触れる部位

部位により難易度が異なります。一般的に”Penfieldのホムンクルス”にあるように大脳へ伝達される情報がより少ない体幹や上下肢に触れることから始めることで、相手を驚かせずにコミュニケーションをとる方法が推奨されています。

ホムンクルス

触れる順序として一般的にまず、

  • 鈍感な部分
  • 視覚的に確認できる部分

から触れるようにしたほうがよいとされています。

鈍感な部分でも背中を触られたりすると何をしているかもわからないので、不安になります。人の情報収集の多くは視覚で行われます。視覚的に確認しやすい手足から触れるのが一般的でしょう。

絶対に正しい方法はない

見ず知らずの人に触れられたくない部位というのはあります。比較的抵抗のない部位であっても、その部位は、痛みを訴えている部位かもしれません。

事前の情報収集が必須であることは、当たり前ですが、絶対に正しい方法はなく、触れる意図、触れる場所を伝えながら触れることが大切です。他の方法も応用しながら、相手への信頼を築いていくというのが基本的なスタンスになります。では、医学的な処置(駐車や歯科治療)は不快なものが多数ありますが、嫌いなことでもお金を払ってまで受ける理由は、自分の為に必要だと理解できるからです。

自分の為だと理解できなけばどう思うか?

認知症の方の場合は、現状を理解しにくく必要なケアを拒否されるケースは少なくありません。またこれがBPSD発現のトリガーとなるケースもあり、言葉の意味や理解をしてもらい、関係性を築くということよりも、「絆によってケア」をする。「心と心でつながる」といった感覚の必要性があると私は感じています。抽象的な表現で申し訳ありませんが、一般的に不快とされる治療や手技においても、よりネガティブな意味の付加を避けるために、手技の方法も工夫が必要ということです。

触れるとつかむの違い

  • 触れる:軽くくっつく、軽く接触するということ
  • つかむ:手にしっかりと握り持つ、強く離すまいとする行為

あくまで大切とされる方法は「触れる」です。

腕を持ち上げるときも下から支えて相手との接触面積を増やして触れる、トータルタッチを意識することが大切です。

立位援助

立位をとることは単純に、「歩行機能が高まる」「心肺機能が高まる」「廃用予防」で行われるのではなく、以下を獲得する方がより重要です。

  • 意識
  • 尊厳
  • 空間的な認知機能

臥位時間が長くなっている方は多く、臥床時間短縮の為に椅子に座ったり、机にふせている環境の方も多いと思います。環境設定でも防げるので、まず相手の立場に立って、「考える」ことの重要性を訴えています。

冷静になって考えてみると、人は、2足歩行で生活し、奥行きのある空間を自由に動いていました。では、「臥位生活はどうでしょうか?」

臥位で目にするのは天井か横の壁だけです。

人は身体を起こした姿勢で、空間的な位置把握を行い、他者との3次元空間でのコミュニケーションによって、自己の尊厳を実感できるのではないでしょうか?

また人には自由意志があります。つまり選択できるのです。自ら選ぶことができない状態で横になり続けていると尊厳を保つことができるのでしょうか?

たとえ終末期においても、その人の尊厳を保ち、機能的な緩和を目的とする観点からも、立位・坐位をとることは重要なことと言えるのではないでしょうか?

相手は常に人なのです。

4つの柱の組み合わせで「心が伝わる」

コミュニケーションは、自分の感情や思考を相手に伝え、関係性を築く方法であり、1つの方法ではなく、様々な側面から相手を知り、相手と自分との間の橋をかける行為であるともいえます。相手の中の言葉を知るためには相手に教えてもらうしかなく、よく知らない人は警戒して開示することはありません。

どんなに崇高な想いをもっていても、相手をないがしろにすれば成り立ちません。常に相手が存在するから自分が存在し、役割もあるわけです。心を通い合わせるには、表出した行為を相手に伝える。そのためにこの4つの方法をユマニチュードでは想いを伝えるために重要視しているわけです。

5つのステップ

ケアの現場では、毎回相手との関係性を築くことが大切です。「仕事の為にきたのではなく、あなたに会いに来ましたよ」ということを伝え、焦ってケアの内容や、自分勝手な要件だけを伝えることをしないことです。これはコミュニケーションの基本で一方通行とならないために気をつけるべき点です。

そこで各回一度きりではなく、ユマニチュードで教えられている「次につなげる1つのシークエンス」としての手順となる5つのステップにわけて紹介します。

この流れは普段私達が人と接する際に自然と行っていることです。それをより相手に合わせた形で、意図をもって実践していくことであらゆる場面で対応できるようになります。各ステップの名前よりも相手を常に意識して実践することがコツです。

出会いの準備

相手の前や扉の前に立ち、部屋に入る時に皆さん当然ノックやチャイムを押します。ノックをしてもすぐに反応がなくとも自分の存在を知らせるノックです。難聴の方もおられますし、ノックで誰かが来たと理解できるまで少し時間のかかる方もいます。

認知症者は、聴覚情景分析能力低下している可能性が指摘されています。そのため、時間をとって再度ノックをする。ユマニチュードでは「3回ノックして3秒待つ」✕2回を推奨しています。

礼儀としてではなく、以下の目的のための技術として用います

  • 相手に誰かが訪問してきた
  • 覚醒水準を高めるため

ケアの準備

「仕事の為だけに来た」のではなく、「あなたに会いに来た」ということを相手に伝えます。

仕事の為に、そのケアを受ける側にとって不快なケアが何度も続けば、嫌悪刺激となり、拒絶につながります。

目が合えば、視線をはずさず、視線をそらすような動きがあれば自らその視線に入り、正面から喋りかけながらゆっくりと近づいていく様に近づいていきます。

はじめから特定のケアを口にするのではなく、身体を拭く等の他の言い方で誘い、相手の同意をとることが重要です。ケアに至るまでの目安は3分以内を目安に、拒絶があるようであれば一旦立ち去る等の対応を推奨しています。必要なケアであっても、同意が得られないケアは強制なケアとされています。

一旦立ち去ることで、相手は「自分が望まないことを無理やり行われることなく、自身に交渉の余地がある」ということを示すことになり、選択肢ができることで相手の尊厳を保つことができます。

知覚の連結

相手から同意がとられたら実際のケアの開始です。

上記で示した、「見る」、「話す」、「触れる」という行為を同時に用いながら、ケアをすすめていきます。

その際は、スタッフ側の言語的・非言語的メッセージに矛盾がないように全て同じ意味をもたせるように意識することが大切です。

  • 「下から手を添えて持ち上げる」✕ 「優しい声掛け」 ◎
  • 「急がずゆっくりとして下さい」✕  「荒々しく、早口」 ☓

後者の例は気付かずに、自分のことに精一杯になっている時に起こりやすい例です。よって、自分の緊張は相手に伝わるものですので、常に心には余裕をもち、客観視をするトレーニングを日頃から心がけるクセが必要です。

各メッセージがポジティブで快適な要素を持っている方が相手にとっては受け入れやすいの予想がつくと思います。

感情の固定

ともに過ごしたケアの時間がとてもよいものであったことを共有をして締めくくります。感情と結びついた記憶は残りやすいと言われています。

相手を次回には忘れてしまっていることはありますが、「この人は嫌なことをする人ではない」という強化刺激だけは感情的には覚えていてくれれば次回の介入もしやすくなります。

皮肉なことに嫌悪刺激の方が記憶に残りやすく、できるだけ「この人は嫌なことをする人だ」という刺激だけは与えないようにするべきです。良い感情記憶を残すためにも、短時間で、感情を言語化することが、ケア側には求められます。

ex:「運動することで、身体のダルさがマシになりましたね」

再会の約束

善の感情記憶を残し、「また会いましょう」と次回のケアへつなげる段階です。

嫌なことをする人であれば断りたくなりますが、良いことをしてくれる人や話が楽しくできる人であれば肯定的に受け入れられる可能性は高まります。紙やホワイトボードに書いたりして、楽しみにしてくれるようになると1つのシークエンス、また、シームレスな形で継続されるようになり、次回の介入時の抵抗を少なくすることにできます。

書籍紹介