本記事では、以下について解説しています。
- 【介護保険制度】の概要について
- 【訪問看護ステーション】の概要について
- 払いすぎたら介護保険費用も払い戻しがある?
- 1単位=10円ではない?
- 医療保険が適応できる疾病について
【介護保険】は、40歳〜加入者が保険料を納め、要介護認定を受けてから介護サービスを利用する制度です。運営するのは市区町村ですが、健保組合では40歳~64歳の人から保険料を徴収されます。詳しい制度内容については、厚生労働省HPを確認頂くことが一番正確です。 介護保険制度は持続的な運営のため、3年ごとに事業計画の見直しを行われます。原則として40歳以上の全国民が加入しますが、保険料の負担方法は年齢によって異なります。
介護業界でも2025年問題がよく議論されます。2025年は団塊の世代が全てが後期高齢者にあたる75歳以上に到達する年です。この年から超高齢社会に突入していきます。国は資源が限られている現実を踏まえて、より地域で長く生活できる仕組みづくり【地域包括ケアシステム】の構築に取りかかっています。個人的にはうまくいかないだろうなと感じています。おそらく現場で働く人の献身的な態度により持ち堪える形になるかと思います。
(※【地域包括ケアシステム】については、以下をご参照下さい)
ニュースなどでよく耳にすることはありますが、具体的なことは浸透していません。親が実際に介護をされるようになってからでは、制度のこともよくわからず困ってしまうので、普段は訪問看護事業所で日常的に介護保険、医療保険を扱っている筆者が簡単な制度の仕組みついて紹介していきます。
介護保険サービスを利用できる人
40歳から介護保険費の支払いが始まりますが、利用できるには条件があります。
- 65歳以上の第1号被保険者で介護認定審査の結果、要支援又は、要介護と認定された人
- 40歳以上65歳未満の第2号被保険者で国が定める【16特定疾病】に該当し、介護認定審査の結果、要支援又は、要介護と認定された人
16特定疾病とは
- がん【がん末期】
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
以上が介護保険適用となる16特定疾病です。一部条件のあるものがありますので、詳しくは厚生労働省HPをご確認下さい。
介護認定がおりるまで
介護認定の申請は市区町村によって行われます。初めての介護認定には市町村から調査員が訪問し、特定の調査票に沿って調査され、コンピュータによる【一次認定】がなされます。その後、一次判定、主治医意見書と調査票の特記事項をもとに介護認定審査会で、要支援か要介護を判定する【二次判定】がなされ、認定結果の通知書と【被保険者証】が届きます。
介護保険の有効期限
【介護認定】には有効期限があります。
- 初回の認定:6ヶ月
- 2回目以降の更新認定:原則12ヶ月
有効期限がきれる1ヶ月前までには申請をして、必要により更新認定を受けることになります。有効期限内に状態が大きく変化した時は、区分変更手続きで判定を受け直すことができます。更新などに関しては、初回の認定によって担当のケアマネージャー(以下CM)がつくことになりますので、代行して申請をしてくれます。
ケアマネージャーとは
実務研修を終了後に都道府県に登録され、介護支援専門員証の交付を受けて業務を行います。受験資格も細かく実務経験などの要件が細かくあります。多くの方は、ヘルパーから介護福祉士となり、その後介護現場で勤務後になる方が多いです。一部医療従事者でCMである人もいますので、ご自身に合った方を指定することができます。主な業務は、以下の業務が該当します。
- アセスメント
- ケアプラン作成
- モニタリング
- 計画変更
- 給付管理業務
- 介護報酬請求 など
どんなサービスが適切かどうかをアセスメントし、利用者本人からの相談を受けた上でケアプランとして、サービスを提供している事業所を選択肢ています。事業者の選択権は利用者にありますが、多くの方はCMにおまかせとなっていると思います。
国も介護サービス情報の公開を制度化
利用者がサービス提供をする事業所を自由に選択できるようにするため、介護サービス業者は、情報(サービスの質や従業者など)を公表することが義務付けられています。インターネットを通じて、検索が可能となっています。
7段階の介護度と単位(H29年12月現在)
本人に届く【介護保険被保険者証】には、要支援又は要介護度が7段階のグレードが記載されています。以下に介護度と上限単位数を記載します。
- 要支援1: 5,003単位
- 要支援2:10,473単位
- 要介護1:16,692単位
- 要介護2:19,616単位
- 要介護3:26,931単位
- 要介護4:30,806単位
- 要介護5:36,065単位
各サービスには、時間とサービスの種類によって単位数が決められています。サービス費用が各介護度に応じた上記の上限単位数以内であれば、介護保険の負担割合票に応じた負担で自己負担となります。【自己負担割合】は、1割もしくは2割負担となっています。H30年度より3割負担の方もおられます。
1単位=10円?
だいたい10円と考えて構わないと思いますが、厳密には異なります。単位当たりの金額は、地域区分というものによって、最大11.40円〜10円となっています。サービス提供事業所が該当する市町村によって、1単位当たりの金額が異なります。
上限単位数を超えた場合は?
上限単位数を超えた場合は、超過分が【自己負担】となります。【自己負担額】は、【超過単位数】×【地域区分】=となります。1000単位超過で、1万円ちょっとくらいの自己負担が増えることになります。基本的には、単位数に従いますが、自費サービスとして提供しているサービスもいくつかありますので、各介護サービス事業所により異なりますので、そちらで確認下さい。
加算
利用者の負担は、介護サービス費用の単位数以外に加算といって必要に応じてまたは、サービス提供事業所の規模や条件により決められた額があります。その点も公表義務によりインターネット環境であれば検索できます。また担当CMに確認して頂ければ、提示頂けます。
高額介護サービス費
医療保険には、ある一定額を自己負担として上限を設けていますが、介護保険にも高額介護(介護予防)サービス費として、上限が設けられています。世帯合算や個人の負担上限額が設定されているため、あまりにも高額が続いている場合には、保険者の市町村HPを確認することをお勧めします。
介護サービスの例
主に居宅(自宅での)サービスを以下に例をあげます。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 福祉用具貸与
これまでが大まかな介護保険についての紹介でしたが、ここからは運営者が所属する訪問看護ステーションについて紹介させて頂きます。
訪問看護の歴史
- 1981年:一部の医療機関や保健師が福祉事業として個別に訪問が実施されるようになった。
- 1982年:老人保健法が施行。自治体が行う「訪問指導」が開始。医療機関が退院患者向を対象に行う訪問看護が始まる。
- 1991年:の老人保健法等の一部改正により老人看護保険制度が創設され、都道府県知事の指定を受けた老人訪問看護ステーションからの訪問看護が1992年4月1日より開始されました。
- 1994年:に健康保険法等の改正により訪問看護制度が創設され、老人医療受給対象者に限らず、難病や精神、末期がんなどの在宅患者に対する訪問看護ステーションから訪問看護が開始された。
- 2000年:【介護保険制度】が開始され、指定居宅サービス事業者として、要支援・要介護者への訪問看護が提供することとなった。
訪問看護とは
病気や障害を持った人が住み慣れた地域やご家族で、その人らしく療養生活を送れるよう、看護師等が利用社宅へ訪問し、看護ケアを提供すること。利用者の自律への援助と、療養生活を支援するサービス。
訪問看護ステーションで働く人々
訪問看護と聞くと、看護師のみが働いているわけではありません。以下の業種が主に勤務しています。
- 看護師
- 准看護師
- 保健師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 事務員
- (助産師)
訪問看護サービスを提供する事業所
主に訪問看護を提供している施設は、以下の施設です。
- 訪問看護ステーション
- 病院
- 診療所
上記に加えて、以下の施設が訪問看護サービスを提供します。
- 定期巡回
- 随時対応型訪問介護看護事業所
- 看護小規模多機能型居宅介護
サービス内容
- 病状観察
- 医療処置
- 医療機器の管理
- 清潔、衣食住、食事や栄養、排泄、服薬のケア、生活の指導
- 入浴介助
- 在宅でのリハビリテーション
- ターミナルケア
- 家族支援
- 介護相談
- 環境整備
他サービスとの連携で訪問看護に必要なもの
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力
- 他サービスの理解・把握
- 情報発信
専門家としてスキルが高いことは当然ですが、利用者を中心としたチームで生活を支えることになりますので、双方向の職域の理解が必須になります。職域を理解出来なければチームの一員としては認められませんので、相手の話を聴くことと同様に必要な知識となります。
訪問看護ステーションのリハビリは、訪問リハビリではない
誤解を招きやすい内容ですが、たとえ訪問看護ステーションから理学療法士が在宅でリハビリテーションを実施しても、それは訪問リハビリテーションではありません。あくまで、訪問看護の範疇で提供するサービス(診療の補助行為)となり、介護保険サービスである【訪問リハビリテーション】ではありません。かかる費用も異なります。幾つかの点で、訪問看護の方が利用者にとってメリットが大きいのが現状です。
訪問看護は医療保険の適応がある
訪問看護ステーションが対応するのは、【介護保険】だけではありあません。条件を満たすことで、医療保険対応となる場合があります。(医療保険の場合は、患者の利用料金の負担上限が決められている場合がありますので、有効に利用することが勧められます)要件に該当するかどうかは、【厚生労働大臣が定める疾病等の患者】として決められています。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上かつ生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)
- 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群若しくは頸髄損傷の患者又は人工呼吸器を装着している患者
- 特別訪問看護指示書のある場合(患者の容態の急激な悪化(急性増悪)、終末期、退院直後などの場合に主治医の判断に基づき、週4回以上の訪問看護を14日以内利用することを認める際に発行する書類)
以上が医療保険の該当するケースでした。
まとめ
- 介護保険の利用は意外と難しくない
- 利用請求や負担上限に係る所得などまで考えるとややこしい
- 訪問看護の場合は、介護保険だけでなく、医療保険優先の疾患もあるのでさらにややこしい
- 利用者側にとっては、どちらもサービスを受けるだけではわからない
- 介護保険上の全ての調整役がケアマネージャー