ヨーギニー

 

ヨギ

ここ最近はヨガに取り組む男性は増えました。しかし、未だにヨガ教室を覗いてみるとほとんどが女性です。肩身の狭い思いをしたことのある男性はおられるのではないでしょうか?

私も様々な流派のヨガ教室に体験しましたが、一度50名の中に男性が私1人ということがありました。周囲からの視線を強く感じ、全然集中できなかった経験があります。インストラクターももの珍しさからか、レッスン中に話題にあげられたことが思い出されます。

ヨーガの伝統を遡ると「YOGA」は、主に男性が行じていました。歴史から現代のヨガを実践する人たちの変化を追って解説していきます。


YOGAは男性のものだった?

ヨーガの歴史を遡ると、伝統的ヨーガは男性が実践するものでした。

特に【ハタ・ヨーガ】のような体力を使う伝統的ヨーガ修行に参加する女性は皆無だったと言われています。

では、「女性がヨーガ修行に参加していなかったか?!」というとそうではありません。当時の文化背景から考えられる女性に特有な方法でヨーガが実践されていました。

女性が実践していたヨーガ

伝統的なヨーガは大きく6つにわけることができます。

  • ラージャ・ヨーガ
  • カルマ・ヨーガ
  • バクティ・ヨーガ
  • ギヤーナ・ヨーガ
  • ハタ・ヨーガ
  • マントラ・ヨーガ

現代の主流のヨガはほとんどが、ハタ・ヨーガを源流とするヨガです。伝統的なヨーガ行者は生涯独身を貫き、一生をヨーガ修行に捧げていました。確かにその中に女性もいたとされていますが、ハタ・ヨーガのような激しいものではなく、愛のヨーガといわれる「バクティ・ヨーガ」であったり、行為の結果に左右されない行為によって智慧を深める「カルマ・ヨーガ」によって、ヨーガの智慧を伝承してきたとされています。

産業革命がキッカケ

第二次世界大戦後に大きく産業構造が変化しました。人々はこぞって快適さを求めるようになりました。

こうした産業構造の変化は、豊かさと引き換えに種々のストレス関連疾患を生み出しました。工業化によって、時代の進化は飛躍的にスピードアップし、人々はなんとか順応し、さらにこの豊かさの中にこそ幸福があると誤認知して、豊かさばかりを追い求めていきました。しかし、豊かさの中には幸福がないことは確かです。

他者に対して敏感な人々は、この社会のスピードついていくことができず、心が身体と引き離されていきました。心と身体の関係性のことを心身相関といい、この心身相関の乱れによって、肉体に何らかの症状が発生することを現代では「心身症」と呼びます。

当時から現代まで社会での男女の役割の違いは明白でした。男性は外に出て働き、女性は家庭を守るという役割です。

男女の役割をもう少し詳しくみていきます。

男性の役割(戦いの生活)

男性の価値は「如何にお金を稼いでくるか」、会社の中では「生産性の高さ」が男性を評価する基準でした。

男性は心身を犠牲にしてでも「成功」をおさめたり、社会的な地位を築き上げるために他者との争いの中で生きていました。戦いの生活を送る男性が多くを占め、このような価値観で現代を生きている人はまだたくさんいます。しかし、少しずつ変化がみられています。あまり社会的な成功に執着しない人、他者との争いを好まない温和な中性的な男性も増えてきています。

この争いの生活が男性の寿命を縮めているのではないかとも考えられます。

女性の役割(守りの生活)

女性の役割は、家庭を守ることでした。子どもを授かり、育てる「母親」という役割。夫を支える「」という役割。また「女性」という役割です。

異なる役割の中で心身の健やかさがなければ家庭を守ることができないという思考に至ったのではないかと考えられます。「男尊女卑」という言葉は死語だと思いますが、この異なる役割の中で家庭を守ることは至難の業なのですが、社会の価値観の軸は「お金」ですので、評価されずにきました。

現代では人の肉体的労働に対する価値が低下し、男女の役割は明確でなくなってきています。また以前は男性の仕事であった仕事を女性が従事することも増えてきました。しかし、その逆はどうでしょうか?


男女の意識の方向性が違う

このように男女の意識の方向性が大きく異なります。

意識の方向性は狩猟民族の時代から同様です。男性のように「外に敵を作って倒す」ような生き方ではなく、愛をもって子どもを育てる、家庭を支えるなどのおとなしい内向きな心の方向性のある生き方が女性には合っていたのではないでしょうか。これにピッタリな方法として、「心身の調和」を求めるヨーガ的な生き方は、ストレス社会の中で暮らす女性の中に受け入れられていったと考えられています。

現代ヨガの方向性

現代では、ヨガを実践するのも指導するのもほとんどが女性です。女性に受け入れられたヨーガですが、内向きな心を受け入れ、共感できるのも同じく女性であることは理解できます。また身体的美容や健康に敏感に反応したのも女性でした。よって、女性の指導者であるほうが都合が良かったのですが、現代はヨガに関心を示した、感性の豊かな男性も増えています。

もしくは、ビジネスや政治力、経済力を高めるためにヨーガが有効であるという評判を聞きつけた人たちがたくさん一般ヨガクラスに参加しています。これらの方に合わせた指導方法が求められると思いますし、男性の指導者もこれからは増えていくと考えられます。

女性の中には、以前の男性的な役割を担う方も増加していますので、今後はより心に重きを置いたヨーガが広まっていくことは容易に予想されます。

伝統的ヨーガの世界

ヨーガの世界も男女の壁はなくなりつつありますが、伝統的なヨーガは今も昔も、さらにこれからも変わることなく男性社会です。

この理由は1つです。圧倒的な体力の差です。

伝統的ヨーガは、ヒマラヤ山中で粛々と伝承されています。陸上競技やあらゆるスポーツの記録を考えるとわかりますが、体力面で圧倒的に男性が勝ります。ヒマラヤという過酷な山中において、生き抜くには体力がなければまず不可能だからです。

よって、今後も男性社会であることには変わりがないと考えられます。

まとめ

ヨーガは誰でも実践できる方法ですが、伝統的なものと現代のものでは大きく異なります。それぞれの役割は異なりますので「どちらが優れているか?」という問題ではありません。

どちらも素晴らしく、現代において調和した生活をしていくことが求められます。伝統的ヨーガの目標は「解脱」、現代ヨガの目標は、理想的な健康の追求も同様な目標です。

これからは男女ともにヨーガが広まっていきます。なぜなら、ストレス関連疾患に対して、非常に合理的な戦略を伝統的ヨーガを現代にマッチさせた【ヨーガ療法】が持ち合わせているからです。