本記事では、以下を紹介しています。
- 神経障害性疼痛の特徴的な痛みの訴えについて
- 一般的な痛み治療の方法について
IASP(国際疼痛学会)では、「体性感覚系に対する損傷や疾患の直接的結果として生じている疼痛」と神経障害性疼痛と定義しています。神経障害性疼痛は様々な疾患・病態で認められ、原因が異なっていても、結果として生じる疼痛や知覚異常は臨床的に同様の性質をもち、障害部位を問わずに一つの病態として分類されます。
(※痛みの基礎知識については、以下をご参照下さい)
神経障害性疼痛は、疼痛の中でも重症度が高く、罹患期間が長い場合が多く、著しい生活の質/QOL低下をもたらします。
(※QOLについては、以下をご参照下さい)
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特徴的な痛み
神経障害性疼痛は、様々な知覚異常として、特徴的な痛みを呈します。
- アロディニア
- 痛覚過敏
- 自発痛
これらの他に、痛みには分類されないが、感覚障害として、DysesthesiaやParesthesiaも神経障害性疼痛の共通の特徴としてあげられています。また無知覚や知覚低下が認められる場合もあります。
また、神経障害性疼痛患者は、特徴的な痛みの訴えをされるとされています。
痛みの訴えに関しては、文化的背景や患者さんの語彙力により様々であり、特にしびれ感については、日本人では、”痛み”、”感覚異常”、”感覚低下”の症状でも”しびれ”と訴える場合があるために注意が必要と言われています。
自発痛
接触などの刺激がない状態で起こる痛みで、日単位から週、月単位で増悪、軽快を繰り返し、完全に消失することがないとされています。具体的な痛みの性質としては、以下の様に表現されます。
- 焼けるような
- うずくような
- 引き裂かれるような
痛覚過敏
痛覚の閾値が低下or反応性が亢進した状態のこと。軽微な痛み刺激でも激しい痛み
アロディニア
通常痛みを引き起こさない軽く触れるような刺激や温覚などの刺激で惹き起こされる痛み。
Dysesthesia/ジセステジア
温・冷・痛覚・触覚などと違う、普段体験したい感覚で、具体的には、以下の様に、他の人には説明しづらい状態。自発性または誘発性に生じる「不快な異常感覚」とされる。
- ぴりぴりする
- じんじんする
- 嫌な感じ
Paresthesia/パレステジア
外からの刺激に対して感覚異常が生じたり、触刺激をを冷覚と感じたり、冷刺激を温覚や痛みに感じてしまうなど、不快さのない異常感覚。自発性または誘発性に生じる「異常感覚、錯感覚 」
一般的な疾患・病態との関係性
神経障害性疼痛は、神経の損傷部位により末梢性と中枢性に分類されます。
末梢性神経障害性疼痛の代表例としては、以下があります。
- 帯状疱疹後神経痛
- 糖尿病神経障害に伴う痛み、しびれ
- 三叉神経痛
中枢性神経障害性疼痛の代表例としたは、以下があります。
- 脳卒中後疼痛
- 脊髄損傷後疼痛
- 多発性硬化症による痛み
また、侵害障害性疼痛と神経障害性疼痛の要素を併せもつものもあり、代表的なものとして、以下があります。
- 慢性腰痛
- 頸肩腕症候群
痛みの評価
痛みは主観的な感覚経験であり、客観的な評価は困難です。したがって、痛みの評価には様々な方法が用いられています。代表的なものとして、以下があります。
- VAS
- NRS
- FRS
(※痛みの評価方法については、以下をご参照下さい)
発症機序
神経障害性疼痛の発生機序は明確にはなっていませんが、多くの要素が関連していると考えられています。代表的な考え方として、以下に分けられます。
- 末梢性機序:末梢神経系(神経終末〜脊髄後角)の異常
- 中枢性機序:中枢神経系(脊髄後角〜大脳皮質)の異常
中枢性神経障害性疼痛は中枢性機序が関与し、末梢性神経障害性疼痛は末梢性機序と中枢性機序の両方が関与していると考えられています。
治療
神経障害性疼痛の治療の目的は、以下が考慮されます。
- 痛みの軽減
- 身体機能の維持、改善
- QOLの維持、改善
治療方法は、薬物療法が中心となりますが、他に以下が用いられる場合があります。
- 神経ブロック療法
- 外科的療法
- 理学療法
まとめ
- 先進諸国の罹患率は、1〜7%とされ、長引く痛みは、早めに医師へ相談が勧められる
- 増悪、軽快を繰り返す痛みは特に注意が必要
- 特徴的な痛みの訴えがある
- 慢性化することで著しいQOLの低下が懸念される
- 放置することで、痛みはどんどん複雑化していく