対話

本記事では、以下を紹介しています。

  • 言葉の意味を理解して上で使用する大切さについて
  • 会話と対話の意味の違いについて
  • 対話=相手を理解するトレーニング
  • 多義語の使用は、人のつながりの希薄化を加速させる

対話

相手と的確にコミュニケーションをとる為には、言葉のもつ意味を正確に使うことが必要だと考えています。現代人は、若者言葉とも言われており、この代表例が「ヤバイ」です。”ヤバイ”は状況によって意味が異なります。使い方の例として、

  • 美味しい
  • 面白い
  • 楽しい

これらの意味として、”ヤバイ”の一言で済んでしまいますので非常に便利な言葉です。しかし、年代によっては非常に奇妙な感覚を覚える言葉だと思います。この言葉が当たり前のようになっているのが、人との結びつきが弱くなっていることを表している現象だなと感じています。

なぜなら、相手に自分の意図を伝えるためのコミュニケーションがいつの間にか、自分の発する言葉を他者が理解しているかどうかには関心を示さず、皆がそれぞれ好き勝手に同調するように使用していることに危機感を抱いています。

そこで今回は、【会話】と【対話】の違いについて解説していきます。

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会話とは

会話(かいわ)とは、2人もしくはそれ以上の主体が、主として言語の発声・手話・ジェスチャーなどによる意思表示によって共通の話題をやりとりするコミュニケーションや、あるいは話をする行為全般(内容・様式など)のこと。

(引用:コトバンク

一般的な人と人の他愛のない話をすることが会話であると捉えることができます。信頼関係のあるなしに関わらずにできる行為のことです。日常的な挨拶なども会話に含まれます。

 

対話とは

広義には2人以上の人物間の思考の交流をいい,広く文学的表現法として用いられるが,特に哲学では問答によって哲学的主題を追究していく形式。

(引用:ブリタニカ国際大百科事典

一般的なコミュニケーションという意味で使用されていることが、この対話です。自分の中の感情・思考・行動を相手へ正確に伝える手段がコミュニケーションです。しかし、対話は自分の思考を伝えるだけに限らず、【思考の交流】とあるように、相手の思考を受け、相互理解を育む、共同作業と捉えることができます。

(※コミュニケーションの基本スキルについては、以下をご参照下さい)

 

”会話”と”対話”の違い

辞書的な意味だけを考えれば、相手と話をすることは共通しています。しかし、いくつかの観点から考えると両者には相違点があります。

会話は「共通の話題」について話をすることに目的がありますが、対話は「物事の感じ方」(≒価値観)の交流をし、そのすり合わせをするようなイメージです。建設的に相互理解をする作業とも考えられます。

熱量についても相違があり、会話が”表面的な会話”に対して、対話は”真剣な話し合い”のイメージです。

また、相互理解と同様な意味合いになりますが、これから未来へと続くお互いの関係性を築く手段の違いとも捉えることができます。特に対話は、どちらが「正しい」「間違っている」という争いをすることではありません。価値観が異なるので、関係性を築く目的で実施するお互いの【価値観のすり合わせ】というのが私がもっている個人的なイメージです。

セラピーに必要なのは、”会話”と”対話”どちらか

閃き

セラピーにおいては、どちらが適しているかと考えると、間違いなく【対話】でしょう。

何故なら相手は人です。人それぞれに価値観があります。人の価値観を無視した一方的な目標を押し付けは、決してあってはいけませんし、これはセラピーとして成立しません。まずそんな方法で設定した目標が達成するとも思えません。

(※目標設定の重要性については、以下をご参照下さい)

一方的な目標提示では、価値観を否定していると感じさせてしまいます。クライエントへの一方的な解釈を押し付ける行為では、何度言っても同じ会話を繰り返す、いわゆる【循環論】となってしまいます

(※循環論については、以下をご参照下さい)

関係性を築くための対話

非言語的な態度、姿勢も含めて「あなたの話をしっかりと聴いていますよ」というメッセージを送らなければ、信頼関係も築けません。またクライエントに本心を語ってもらうこともできません。

信頼を損なう行為の代表例に、書きものに夢中になって、相手に背中をむけながら話をした経験はないでしょうか?

(※表情が与える他者への影響については、以下をご参照下さい)

結果的に同じ目標になったとしても、その過程が全く異なります。相手に説明し、一緒に考え、納得の上で同意をもらうためには、過程を大切にすることが勧められます。

インフォームド・コンセント

【インフォームドコンセント/informed consent】略して”IC”とは、

(説明をうけた上での同意の意)医師が患者に診療の目的や内容を十分に説明し、患者の同意を得ること。
(引用:大辞林 第三版

IC

インフォームド・コンセントでは、説明した上で同意を得ることだとされていますが、重要な要素が抜けています。これが抜けていることがその後のトラブルの元となります。重要なのは、【説明】⇨【納得】⇨【同意】をとることです。”納得”は非常に重要な要素なのですが、納得を得るためには信頼関係を構築ができていることが条件になります。

信頼関係を失ってしまう例として、

  • 忙しさという理由で、コミュニケーションの基本であるアイコンタクトを怠る

万人の中の1人に当てはめられることにも人は抵抗があります。間接的に価値観を押し付けられた様に感じます。反対にオーダーメイドの対応には、自分のことをよく診てくれているという安心感を抱きます。この安心感が納得を生み出します。対話をすることで、相手を知ることができます。相手の希望が明確化していないのであれば、その思考の整理をしていくことで、目的がイメージできてきます。この過程がオーダーメイドの対応で、納得を生み出すコツとなります。

そして何よりも対話には、まずは「相手を知ろうとする姿勢」が重要になります。

相手の関心に自分の関心を向ける

カウンセリングにおいて、まず「相手の関心に自らの関心を向ける」ことの重要とされています。セラピスト側からすれば、慣れたフローに当てはめていくかもしれませんが、「相手は人」ということを常に忘れてはなりません。

人の価値観は異なります。価値観が異なるからこそ対話をしていく必要性があります。よって、特定の評価項目に人を当てはめるようなことは避け、常に「相手の関心に関心を向けること」が相手へ敬意を示す方法です。

多義語を使用する危険性

ここまで、対話の重要性を解説してきましたが、様々な意味をもつ多義語の使用は、円滑なコミュニケーションには不都合です。対話をすることなどはさらに困難になります。

対話をすることは、相手を理解するトレーニングと言えますので、日頃から対話をする習慣をつけなければ自己中心的思考や価値観を強め、さらなる人との繋がりを薄めてしまう行為だと考えられます。

よって、言葉を正確に使用することは、非常に重要です。

まとめ

  • 多義語の使用は、相手との関係性構築の弊害となる
  • 型にはめるようなコミュニケーションは避けるべき
  • 日頃から意識的に対話することで、コミュニケーションスキルは向上する
  • 相手から納得を得るには、目標に至る過程を大切にする