「コミュニケーション」は、自分の「感情」「思考」「行為」を相手に伝える方法ですが、5つの基本スキルから成り立ちます。
- 環境設定
- 傾聴
- 承認
- 質問
- 提案
これらの基本スキルを用いることで相手の頭の中が整理され、問題や優位性が明確になり、戦略的な行動を起こすことができるようになります。「コミュニケーション」を理解には、「感情」と「思考」は「行動」の中身であることを知っておく必要性があります。
- コミュニケーションの基本の5原則について
- 相手の視点を持つことの重要性について
- 言葉の意味を適切に知る重要性について
- うまく会話ができない原因は、しらないうちに相手を否定している問題について
- コミュニケーションは最強スキルである由縁について
本記事では、以上の内容について解説していきます。では、【コミュニケーション】の基本スキルを順番にはじめていきましょう。
相手の話を聴く為の注意点
まず相手と会話をする時には、自分が相手の話を聴く準備ができていなければなりません。
真剣に話しているのに、他の作業をしながら片手間で聞かれるのは嫌じゃないですか?相手も話しているのだから、「聴いていますよ」というメッセージを相手に示すのが、相手を尊重した関わり方だと思っています。
患者さんがよく、病院に受診した時に、医師がパソコンにずっと向かっていて「話を聞いてもらえていない」という訴えを語られることがあります。忙しいのはわかりますが、相手は人です。それだったら、パソコンで受診出来るようにしたほうがよっぽど良いと思います。
相手との話を聴く時の基本的態度の注意点を以下に掲げてみました。
- 相手の言葉を聴く準備をする
- 相手の話の腰をおらない
- 相手がうまく表現できないような時には、うまくまとめ喋り続けられるようにする
- 相槌をうつ
- メモに要点を書き留める
- 相手の話した要点を繰り返して確認する
話を聴く時は当たり前ですが常に相手を中心に考えることが重要であるということです。
①環境設定
相手と話をする時には【場作り】が重要です。自分が大事な話をするのに同僚がたくさんいる場所では話がしにくいものです。話の重要度や緊急性によって必要な場所は異なりますが、その重要度も相手にとって、「どうであるか?」を考える必要性があります。自分本位ではなく、相手の事を考え「コミュニケーション」は「リラックス」して話ができるように、まず相手に安心の場を作ることはマナーだと思います。
周囲の環境を整えることだけでも相手は、「自分の話を真剣に聴こうとしてくれている」という姿勢を理解し、安心して本音を話しやすくなります。下準備をすることは、相手への自分からの働きかけを効果的にし、「ラポール/親密度」を形成しやすくなります。
特に以下の3点を整えると良いとされています。
- 時間を整える
- 身体を整える
- 空間を整える
時間を整える
時間の始まりと終わりを決めることで、相手が内容や話の量を決め、落ち着いて安心することができます。身の上相談などでは、正直に自分から◯◯分しか今はないと先に伝える方が良いと思います。また時間が足りない場合の【代替案】を示すことで、誠意を伝えることができますし、自分のことを考えてくれていると感じてもらうこともできます。
身体を整える
聴く姿勢を整えることです。深く、ゆっくりと息を吐き、相手の話に口を挟まずに、最後まで聴こうと意識を相手に集中させます。特に以下の態度は慎む方が良いとされています。
- 腕を組む:意見や考えは受け入れないという意味を相手が感じてしまいます。
- 足を組む:文化背景により異なりますが、日本では相手の人格を無視したように受け入れられる可能性があります。
身体的な姿勢は、【非言語コミュニケーション】は初対面の相手では特に重要視されています。あくまで相手がネガティブな印象を感じる可能性のある態度は、初対面や関係性が薄い相手の場合は避ける方が無難な態度であると考えられます。
(※【非言語コミュニケーション】については、以下をご参照下さい)
空間を整える
相手の位置と距離の関係性を示します。【パーソナルスペース】など相手にとって心地の良い座り位置を設定します。状況や関係性によって、座り方の設定をする必要性があります。1対1の面接を例にとって、3つの例を以下に示します。
- 対面法
- 90度法
- 平衡法
対面法
相手と直接目が合う為、少し緊張感がうまれます。上司−部下の関係や指導や面談場面でよく用いられます。お互いが異なるもの(互いの顔)を見ることになります。
90度法
程よく相手を見ることができるため、時々自然に【視線】をはずすことができ、両者が【リラックス】することができます。【コーチング】や【カウンセリング】では、この【90度法】がよく用いられます。
平衡法
ベンチや車の助手席に座った時のような比較的【親密感】のある位置関係です。一緒に【夢】を確認するなど、カップルなど親密な関係の座り方です。相手の顔はみえないため、同じものを見ているようで、【異なる考え】や【夢】を描いていれば交差することなく、平衡なままになります。
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相手との適度な距離
個人により異なりますが、一般的には【70〜150cm】は空けるように意識することが勧められています。これは【パーソナルスペース】と言われる距離で、相手との親密度、表情から判断して、適切な距離をとるように意識します。あまりに遠すぎるのもよそよそしく思われますので、相手の態度に合わせるのがbetterです。初見の男女、カップルや仕事上の上下関係では、それぞれ距離が異なります。
パーソナルスペース
【パーソナルスペース】は、動物における縄張りと言い換えることができます。個人によって異なるというよりも、相手との【関係性】や【環境条件】によって異なります。以下に一般的に言われている距離と関係性の目安を紹介しています。
- 120〜360cm:仕事の付き合いや形式的な関係性
- 45〜120cm:友人など親しい関係性
- 0〜 45cm:恋人や友人などの親密な関係性
それぞれに適した距離があり、近すぎても遠すぎても違和感がうまれます。恋人関係なのに300cmも離れていれば、本当に恋人なのか?と思われます。逆に仕事の付き合いのみなのに45cm程度の距離であればやましい関係性なのかと疑いをかけられかもしれません。人と物には適度な距離があります。それは外見上の距離で、その背景や価値観を知らなければならなければ、理解することも難しいものです。
②傾聴
こちらの知りたい情報ではなく、相手が話したいことに【関心】【共感】を示し、集中して聴くことのことが重要です。注意することは、【相手の関心事】がテーマであることです。こちらの知りたい情報のみを情報収集することでは【尋問】になってしまいます。この支配関係に陥ってしまい、対人関係を築くことはできません。
効果
【傾聴】による代表的な効果を4つ紹介します。
- 信頼関係の構築
- 浄化効果と自己受容の促進
- 自己理解
- 受容への展開(課題を認識し、行動・成長へつながる)
【聞く】【聴く】【訊く】
口語では、意識されませんが言葉にすると【きく】も異なる漢字が存在します。それぞれの意味を以下に紹介します。
- 【聞く】:自分にとって有用な情報を耳に入れる
- 【聴く】:意識的にきく、相手の発言を注意してきく。相手の発言だけでなく心も心情もきくこと
- 【訊く】:必要なことを問う、尋ねる
人との関係性を築く為には、【聴く】姿勢が大切が必要であることがわかります。
5つの心構え
聴く側の準備としての5つの心構えとして、大切とされていることを以下に紹介します。
- 意味を考える :相手の【意図】を考える
- 結論を急がない :勝手な【解釈投与】はせず、あくまで【聴く】
- 無智の姿勢 :自らのこだわりや執着による偏見や思い込みを排除する
- 確認する :わからないことは相手にきく
- 全体に気を配る :話の一部ではなく、全体として何を伝えたいのかという【意図】を考える
Rapport
相手と【コミュニケーション】【相互理解】をするには信頼関係が重要です。【信頼関係】とは、お互いの理解と【調和】のある関係性のことを指します。その関係性を得る為のコツがいくつか存在します。
- お互いの姿勢やしぐさや振る舞いを合わせる
- 声の調子や言葉遣い、速度を合わせる
- 呼吸のペースを合わせる
- 感情の共有
一般的によく言われる、【ペーシング】【ミラーリング】【同調効果】と言われる方法です。故意にまねることもテクニックとしてありますが、相手の心情や立場にたって考えようとすると自然とこのような態度は生まれてくることがあります。
積極的傾聴法
聞き手が相手の話を聴いていることを【積極的】に示すことで、相手が話を進めやすいように促すことをいいます。
- 相手の言った【キーワード】をタイムリーに繰り返す(特に言葉数が少ない人に対して)
例:「なるほど◯◯ですね」
- 相手の言ったことを要約して、自分の理解が正しいかどうかを確認する。(一気にたくさん話す人の適しており、話を整理していきます)
例:「要約すると◯◯ということですね?」 「〜という理解でよろしいですか?」
これらの方法の使用は、少し注意が必要です。例えば間違っている場合には、関係性を損なう可能性があります。【閉ざされた質問/closed−Question】となるので、【解釈投与】や自分の解釈を確認する【同定】にあたります。ある程度の話をしてから使用する方がよいとされています。基本的には、【開かれた質問/open−Question】でのコミュニケーションが無難な方法です。
【オープン】と【クローズド】な質問方法の違いについての説明は、以下の④質問で解説しています。
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反映的傾聴法
相手の話を相手が持っている【感情】につなげ、話し手が自分は受け入れられていると感じるようにすることをいいます。
- 相手が持っている感情を言語化する:【感情の同定】
例:「とても辛かったのですね」、「ワクワクして楽しかったですね」
③承認
常に【肯定的】に受け止め、心に受け止めたことを言葉にして、受け止めることをいいます。そもそも私達は「他者から認めてもらいたい」という【欲求】があります。他者から承認されることで,自分が認められている,気づいていてもらえている、という感情になり、その結果やる気も高まります。さらに,相手との信頼関係の構築にもつながります。
「あなたの存在を認めていますよ」という意図の言葉を伝えることで相手の【存在】や【行動】、変化など気づいたことを認め、【言葉】にして伝えます。社会の中で役割や責任によっての上下関係はありますが、人間としての関係性は横、つまり【平等】です。言葉の使い方で【無自覚的】に上下関係を構築してしまうこともあります。代表的な言葉は、【褒める】ことです。相手に送る言葉は、慎重に選ぶ必要性があるということです。【言葉】を専門に扱う人は、言葉の持っている意味を正確に理解することは非常に重要だと考えられます。
(※人の評価の中だけで生きることはあまりすすめられません。その理由については以下をご参照下さい)
相手を認めることを示す【メッセージ】には、いくつかの送り方があります。代表的な3つのメッセージを解説していきます。
- 相手の【存在】そのものを認めるメッセージ
- (気持ち)【思考】【感情】を伝えるメッセージ
- 【勇気づける】メッセージ
1.相手の存在そのものを認めるMessage
心で感じたことを【言葉】で伝えることです。これは信頼感や安心感につながります。以下に例を紹介していきます。
- 感謝した気持ちを伝える:「ありがとうございます」
- 観察したことを伝える :「昨日は遅くまでお疲れ様です」 成果よりも行動に焦点をあてる
- 成果や成長を伝える :以前からの改善点、成長点をフィードバック
- 名前を呼ぶ :固有名詞で名前を呼ぶ
2.気持ちを伝えるMessage
主語の違いで伝わり方は変化します。
- 【you Message】(主語:you)
相手は【評価】されていると受け取る可能性があるので、使い方には注意が必要です。
- 【I Message】(主語:I)
私が思っている事実を伝える為、相手は言葉を受け取りやすい表現です。
例「【私】は、あなたがとても優しい人だと思います」 ⇨主語の【私は】を省略せずに伝える方が相手は理解しやすくなります
- 【We Message】(主語:We)
相手との【一体感】を生みだす伝え方だとされています。
例:「【私たち】は、あなたが優しい人だと思っています」
主語は、明確に言葉にすることで大きく意味が異なりますので、多少わざとらしくても意図をもって、適切に表現することが勧められます。
3.勇気づけるMessage
視点を変えるだけで、伝わり方が変わります。たとえ同じ情報であっても【視点】(=焦点をあてる位置)が変わると意味も異なる場合があります。【勇気づける言葉】は、状況をみながら使用するととても有効です。
- 成果以上にその【過程/プロセス】に焦点をあてる。
- うまくいっている部分に焦点をあてる
- 叱咤激励するよりも、【貢献】や【協力】に注目し、【共感】【感謝】を伝える
上記の他のMessageも同時に使用し、「私たちは、あなたが手伝ってくれてとても助かったよ。ありがとう」などの言葉で相手の過程、感謝の言葉を伝え、【貢献感】に焦点をあてると勇気づける言葉となり、相手も尊重されていると感じ、ポジティブな行動が出現します。
人によって、焦点を当てる位置やこだわりが異なります。よって、自分の【タイプ】を知っておくと聞き手となった場合に助かります。
(※タイプ分けによる性格特徴については、以下をご参照下さい)
④質問
4番目は【質問】です。質問は、双方の利点がありますので、それぞれをまず理解しておきましょう。
- 質問する側の利点:相手の情報を把握できる
- 話し手側の利点:【思考】と【感情】が整理・明確化できる
【質問】によって、相手の中の【思考】を深め、答えを見つけることができます。【質問】の仕方には、大きく3パターンに分けて解説していきます。
- Open/Closed
- 未来/過去型
- 肯定/否定型
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1.Open/Closed−Question
Open−Question
相手の考えていることを自由に引き出す時に有効な方法で、相手が自由に、いま思っていることや考えていることを話すことができる質問の方法です。YES/NOで答えることのできない質問方法のことです。
Closed−Question
焦点をしぼったり、決断を迫る時に有効な問いかけです。【解釈投与】となり聞き手の理解が正しいかを確認することができる質問方法です。Yes/Noで答えることができる質問のことです
2.未来/過去型−質問
未来型質問
未来形の言葉を含む質問のことです。未来に向かって今から動くことができる質問のことです。
例:「1年後はどうなっていたいですか?」 「それをやるにはどうしたらよいのか?」
過去型質問
【問い】のなかに過去形の言葉がある質問。相手の記憶をたどる時に有効な質問方法です。
例:「どうしてそれをやらなかったのか?」
3.肯定/否定型−質問
肯定質問
意識が前に向くような、質問のなかに【ない】という言葉を含まない質問。
否定型質問
問いのなかに【ない】という否定形の言葉を含んでいる質問。言い方を変えることで【否定】から【肯定】に変えることができます。
例:「なぜそんな失敗をしたのか?」→「どうしたらうまくやることができたか?」
同じ【意図】の質問であっても、質問の仕方によっては「窮屈で暗い感じ」「明るく感じる」と受取り方は様々あります。物事の原因を明らかにして、同様な失敗を繰り返さない為でも、過去の取り返しのつかないことを考えるよりも、前向きな【感情】を呼び起こし、未来や【目的】に向かって、今後対応策として【目的志向】に考えていくことは建設的な会話として受け入れられやすくなります。
目的に向かうにもセラピスト側が【理想型】を持っていなければ、このループから抜け出すことは困難です。よって、【理想型】の有無がセラピストには求めれます。
(※セラピストが持つべき【理想型】については、以下をご参照下さい)
関係性を築くための質問方法
【過去+否定】【なぜ+You+否定】の形の質問は、【詰問】で出てくる答えになります。【言い訳】や【正当化】する答えが返ってくることになり、会話や関係性が進みにくくなります。繰り返すことによって、【循環論】に陥ってしまうとお互いにとって、悪影響となり、目的となる関係性構築がうまくすすみません。
(※【循環論】については、以下をご参照下さい)
理想的な質問方法は、【開放+肯定=未来】の形になる質問です。この質問は建設的に話が進みやすく、関係性構築にも効果的な方法です。
⑤提案
相手が意見を求めている時などにアドバイスをすることが必要になります。自らの提案が相手にとって【選択肢】がある提案になっているかを気をつけましょう。【選択肢】があるかないかで、【提案】になるか【指示】となるかの違いがでてきます。
- 【提案】:相手に選択肢がある
- 【指示】:相手に選択肢がない
また、いくつか注意点があります。
- 相手に【許可】をとってから提案する
- 【具体的】かつ明確に提案する
- 相手の選択肢の1つとなる【提案】とする
相手の段階と挑戦している課題によって、答えを与えるべきかどうか、【提案】とするべきか【指示】するべきかが異なってきます。
(※相手の状況と課題を考慮した関わり方については、以下をご参照下さい)
まとめ
他者との関係性を築くことを目的としたコミュニケーションの基本スキルを解説しました。普段とっている【コミュニケーション】を知識として考え直すと難しく感じてしまいますので、最も基本的な態度を最後にまとめます。
- テクニックよりも最も重視すべきことは【相手】の視点をもつこと
- あくまで【相手】の関心に関心を示すこと
- 自分よがりな、自分が欲しい質問ばかりされると相手は窮屈な【感情】や【思考】を抱いてしまう
コミュニケーションスキルは目にみえませんが、チームで働くことの多い現代、必須であり、あらゆるスキルとの調和性がよいスキルですので是非身につけていたいものです。少し【視点】を変えるだけで、ガラッと印象が変わります。