現代の一般教室で行われているヨガは、肉体面に対して限局しています。瞑想と言っても身体的なリラックスにとどまることが多く、本来のyogaが伝承している瞑想指導をできているセラピストは極少数だと思います。
ここ最近、体操としてのヨーガから瞑想を含めたところまで関心がよせられてきていますが、大切なのは静かに座っていることではなく、個人の認知の修正と言われる記憶に対する意味付けを修正する、思考の整理がヨーガの本領を発揮するところです。
特にスポーツ選手は常に緊張状態におかれ、不健康な人が多いと言われています。そのスポーツ選手がヨーガを実習していることが注目もされていますが、実は昔から有名なアカデミーなどでも精神集中の方法としてヨーガは積極的に取り入れられていました。
- アサナとスポーツとの違いについて
- 一般ヨガ教室の危険性について
- 少し変わった視点からヨーガの大きな利点について
今回は以上の内容を中心に解説していきます。
ヨーガの一般的な使われ方
「アサナ」や「呼吸法」も含めて、ヨーガは肉体に対して積極的に行われています。アプローチとして一番理解しやすい肉体をターゲットとすることが理解しやすいために行われているのですが、偏った指導がされているのも依然見受けられます。
(※ストレス対処として身体を動かす理由については、以下をご参照下さい)
- 痩せる
- 美容
- 女子力向上
身体的美容や健康を向上するのにヨーガは十分に機能すると考えられますし、とても素晴らしいと私も思います。しかし偏った憧れを抱くような広告によって、人の不安や他者との比較を煽るような広告でヨガクラスへの参加を促す場合や単なる身体への健康体操の1つとして使われているのが多いのが現状です。このような目的であるならば、別にヨーガでなくても可能です。
それでもヨーガに固執するというのには、「ヨーガをしている」という、ある種のステータスとなり、他者から羨ましがられたり、自己評価が低いためにヨガの力を借りているという目的の場合が大きいという穿った見方もできます。この場合はクラスに参加するだけで達成してしまっているので、本人は非常に充実感が得られることができます。
(※ヨーガの効果については、以下をご参照下さい)
ヨーガによって得られるのは、以下のようなものです。
- 均等のとれた体
- 日常でもリラックスできている健やかで柔軟な体
- 必要なときには直ちに強固になれる体
- 体内システムの何ら不調和のないような体
そして、強靭な体にはそれをコントロールするための心が必要になります。
スポーツとヨーガの比較
ヨーガは、スポーツでも柔軟運動でも体操でもありません。「意識を自己の内側に向け、自らと向き合うもの」です。その目的の為に一番理解しやすい肉体の動きを用いて実習することから始まります。
ヨーガとは、身体と心の調和です。反対に「身体と心の不調和」が病気の素とされています。
ヨーガとスポーツが異なる理由
これからヨーガと運動の違いをいくつかの視点から考えていきます。
やり方
スポーツ
- 速い動き
- 動的で反復
- 相手が存在
相手が存在することで、自分の動きだけではなく相手の動きに反応することも含まれます。
アーサナ
- まず相手がいない
- 静的
- 快適な動き
相手に関して強いて言えば、自分自身の内部に存在します。
近年流行しているヨーガは、
- インストラクターが手本
- インストラクターを真似るのが目標
- いかに綺麗に舞うことができるか
- 正解となる形に自分を当てはめていく様にポージングする
よって一般教室のヨガは、ベクトルは他者に向いているという理由から、スポーツに分類されます。
インストラクターは、美しいポーズを生徒の前で誇示することで威厳を保ち、花形の仕事とされている節があります。インストラクターの鉄板の言葉に以下のようなものがあります。
- 他人と比べない
- 無理しないように休みながら
しかし、目の前にインストラクターという対象がいることで大きな矛盾が発生しています。言葉と行動に大きな矛盾が発生しているので、それもまた不調和を抱かせてしまいます。伝統的なヨーガ指導者の中には、生徒の前で自分が「アーサナ」をみせること自体を控えるべきだと考える人もいる程です。
アジャスストメント/adjustment
一般教室の特徴の一つに【アジャストメント】というテクニックがあります。
【adjustment】の意味は、
- 調整
- 調節
- 修正
何を修正するのかがよくわかりません。
危険だから制止するということなら理解できるかもしれませんが、危険なら指導することが大きな間違いです。ましてや、身体を触れて修正する行為は非常に危険です。身体を触るということは、身体に悪影響が出た場合に全責任を負うということを意味しますので、指導者としては非常に注意が必要です。ヨガによる有害事象の報告も増えてきている現代では、今後はインストラクターが訴訟対象になることももっと増えてくると考えられます。
現代のヨーガ業界で非常に問題となっているのが、無理なポーズを取ることによる有害事象も発生しているということです。
「アヒンサー」に該当するこの類のアーサナは、インストラクターという相手が存在し、競争心を煽ることになる点から、現代の巷で行われているアーサナは、スポーツであるということが証明されます。
エネルギー
スポーツ
- 歯を食いしばり
- 自分のパワーをに肉体に表して相手と対峙
- 神経が過度に興奮
- エネルギーを消耗
- 交感神経優位
- 疲労の蓄積
- 怪我
- 疲労
ヨーガ
- 保存
- 充足
- 癒やし
- 副交感神経優位
- 気づき
- 回復
回復と疲労を与える点でスポーツとヨーガは真逆の効果を与えることになります。
yogaは、リラクゼーション後の適度な刺激を与えることによって、肉体を通して多くの気づきを与えてくれます。ヨーガの構造論である【パンチャ・コーシャ】において、エネルギーは【生気鞘】で扱われます。エネルギーは【プラーナ】と呼ばれています。
効果
心身を興奮状態にさせ、相手と争い、交感神経優位の動きに対して、アーサナは争い合うこともなく、意識を自分の内面に向けます。心身を鎮め、健全な状態にさせていきます。
- スポーツ:肉体や精神に疲労を与える
- アサナ:リラクゼーション後の適度な刺激により気づきを与える
自我意識
「私のもの」「私が一番」という相手と競うような意識は、
- 強さ
- うまさ
- 柔軟性
- 勝ちたい など
特定な面を相手と比較をすることとなります。
また特定のものを自分のものとする執着が生じます。比較する意識の中にまず幸福はありません。スポーツには、相手が存在しますが、ヨーガには相手は存在しません。
特にヨーガは肉体を通して、自己への気づきを得る手段です。相手や外部に向いていた意識を自分の内側に向け、より高めていくことによって、さらに深い自己の洞察を可能とします。
進捗
ここでは「グナ/特性・質」という観点から考えていきます。
yogaにおいて「プラクリティ/純粋意識」は、3つの特性/グナという3つの特性から成り立っています。
- サットヴァ:快く、明るく、軽い性質
- ラジャス:活動的で落ち着きがなく、不安な性質
- タマス:暗く、重く、鈍く、ものごとを覆い隠す性質
これらのグナのうちどれが優勢になるかで、その性質があらわれると考えられています。これをトリ・グナ理論といいます。
スポーツは、暗性(タマス)から動性(ラジャス)に進展していきます。動きのない怠惰な状態から活発な状態と導かれていきます。
ヨーガは、動性(ラジャス)から善性(サットヴァ)へ進展していきます。活発で動きすぎ、疲れを生じる動性からより清らかで浄化され、落ち着いた善性へと導かれていきます。
怠惰から脱出するには、まず動性が善いキッカケとなると考えられます。運動したり、散歩したりすると気分がスッキリしたりすることはないでしょうか?
影響を受ける組織
スポーツは、主に表面的な身体の動きに必要な組織への影響にとどまります。
- 筋肉
- 呼吸
- 循環器
ヨーガは、スポーツにより受ける表面的なシステムに加えて、より深い自律神経系の器官への影響を受けます。
- 消化器系
- 内分泌
- 免疫系 など
人格の成長
「小さな命を生きる人から、普遍的な大いなる命を生きる人」
yogaを示す言葉の1つです。
人格をも成長させる方法が「ヨーガ」の特徴的な性質です。それは目に映る肉体よりも目で確認できない微細な深い次元においての成長を促進させる行為であるとも考えられます。
一般的な運動によって疲労を蓄積すると、人体のエネルギーは肉体を守るために使われます。その為、心的な作用にはエネルギーを使われることは少なくなり、気づきを促すためには行われません。
アーサナは、肉体的な恩恵のみならず、種々の気づきを生み出し、肉体はもちろん心や精神を含めた人間全体を健全にすることができます。 また現代では、アーサナを「瞑想的運動療法」と呼び、肉体から心へアプローチし、肉体を客観視することで、自ら気づきを得て自己成長や生活習慣を変えることができます。
この意味でアーサナは、ボディーワーク体系の心理療法の一つだとも言われています。ヨーガを捉える時は、運動療法と心理療法をわけて考えると理解しやすくなります。両者ともにセラピーとうたっている以上は【アセスメント】に基づいていることが大前提になりますので、一般ヨガであってもアセスメントは必須になります。
まとめ
ヨーガの効果をまとめると以下の通りになります。
- 身体機能の調整
- 心理機能の調整
- 心身両面のセルフ・コントロールの獲得
- 身体的、精神的、社会的健康のみならず、自己効力感に関わるスピリチュアルな健康を総合的に作り出す