本記事では、以下について解説しています。
- ヨーガの八支則の概要について
- 対社会次元の自己制御であるヤマとニヤマについて
一般的にヨーガと聞いて思い浮かぶのは、
- アーサナ/体操
- プラーナーヤーマ/呼吸法
実はこの2つは、ヨーガの8段階において第3、4段階目にあたります。
巷で耳にするヨーガの効果が体操と呼吸のみにあるわけではありません。これらは1つの方法に過ぎず、体操と呼吸の前段階に重要な2段階が存在します。
(※ヨーガの歴史については、以下をご参照下さい)
ヨーガは自分の中の内部世界と外部世界との結合を意味します。内外の調和を図ることで自己の本質を知り、心身の健やかな健康を実現を目指していきます。人間は一人で生きていくことは不可能であり、常に他者の存在があります。他者は自分の好き勝手に選べるわけがありません。社会においては、生産性の高い人物が有能とされ、他者からの評価を求めて、人を陥れたり、騙したりする醜い争いも発生しています。
人間の悩みの大半は、対人関係にあると言われています。夜の中には悩みの種になるような人はたくさんいます。
- 考え方が合わない人
- 人の悪口ばかりを話していて気分が悪い人
- 自分の欲のために人を騙す人
- 人の気持ちが理解しようとしない人
ヨーガによって、人を変えることはできません。しかし、自らが変わることはできます。気づきを得た人は、悩みの素である自分のこだわりや我欲に気付き、制御する方法をもヨーガは教示しています。様々な教えを自らに適用させて、自分らしい理想的な健康像を追求していく為の方法は、
- 自己理解を深め
- 気付きを増やす
そこで日常生活でもとても役に立つ、王道のヨーガと呼ばれる、ラージャ・ヨーガ/精神制御のヨーガの実践面にあたるのが八支則/アシュタンガ・ヨーガです。
ヨーガの基本的な教えである、この【八支則/アシュタンガ・ヨーガ】について解説していきます。
八支則/アシュタンガ・ヨーガ
全てのヨーガを行じる者の必読書に、ヨーガ・スートラ(以下YS)があります。これは古来からのヨーガ行者たちによって伝承されてきたヨーガの格言がまとめられ、各節短い言葉で編集されています。この格言集は、智慧を公式化した論理書とも言われ、この格言を理解するためには解説が必須になります。
現代のことわざに似たようなもので、格言を正しい智慧/判断のものさしなしに理解することは不可能です。
「以下がヨーガの八部門である」(Y・S 2−29)
- ヤマ
- ニヤマ
- アーサナ
- プラナーヤーマ
- プラティヤハーラ
- ダーラナ
- ディヤーナ
- サマーディ
これらを【アシュタンガ・ヨーガ】と言います。アシュタンガという言葉は、2つの言葉から成り立ちます。
- アシュタ/八
- アンガ/部門
さらに8つの部門を1〜5を外的部門、6〜8を内的部門とよび、外的部門を内的部門の予備段階としています。古来からこのような修行システムがヨーガでは取り入れられてきました。
(※今回「八部門」としましたが、「段階説」と「部門説」と解釈もわかれています。)
ヤマ(Yama)/禁戒|禁止事項
他人や物に対して守るべき行動とされます。「〜してはいけない」という禁止事項のことです。ここでは対社会次元の自己制御が求められます。日常生活の中で行ってはいけない守るべき道徳的基本で、以下の5つから構成されます。
(※ヤマの人間関係への影響については、以下をご参照下さい)
(※道徳というスキルについては、以下をご参照下さい)
- アヒンサー
- サティヤ
- アステーヤ
- ブラフマチャリヤ
- アパリグラハ
アヒンサー/非暴力
肉体に限定したものではなく、精神面に対しても同様です。
- 言葉
- 思考
- 行動
これらにおいて、苦痛を与えてはいけない、暴力をふるってはいけないということを指しています。
サティヤ/正直
「嘘を言わないこと」もし本当のことであっても他者に苦痛を与えてしまう場合は、口にしないであったり、相手が受け入れられるような方法で伝える等の思いやりのある代替手段で伝える努力が必要になります。
- 思考
- 感情
- 行動
上記の一貫した正直さを日頃から意識し、健やかな生活を送ることが必要です。
アステーヤ/不盗
他人のものを盗まないこと。ものとは、物質的なものに限らず、以下もものに含まれます。
- 物
- 時間
- 信頼
- 権利
- 利益
またこれらに対するうらやむ心を持たないことも含まれます。
ブラフマチャリヤ/禁欲
無駄なエネルギーを使用しないということです。欲望に溺れず、肉体的・精神的な快楽を追求しないことです。
アパリグラハ/不貪
貪らないこととされ、具体的には、以下の重要性がアパリグラハに該当します。
- 次から次へと湧き起こる欲望に任せない
- 何かを過剰に所有しない
- 程度を超えた欲を持たない
- 独占欲を抑えること
ニヤマ/勧戒|お勧め事項
日常生活で自分に対して推奨される行動のことです。禁止事項の【ヤマ】と同様にこれ以降の修行体系システムに入る前に日々の対社会生活において自己制御することがヨーガでは勧められています。
(※心を育てる方法としてのニヤマについては、以下をご参照下さい)
以下の遵守すべき5項目から構成されます。
- シャウチャ
- サントーシャ
- タパス
- スヴァディヤーヤ
- イーシュバラ・プラニダーナ
シャウチャ/清浄
清浄。心身を清らかに保つことととされています。
- 身体
- 心
- 言葉
これらに対するに清浄さが求められます。
サントーシャ/知足
足るを知ると書いく、「知足/ちそく」と読みます。自分の分相応をところで満足し、それ以上を求めないこと/貪り求めないことです。ネガティブな気持ちで物事をあきらめることではなく、前向きに「今」の状態を知りつつ受け入れるということにより、心の平静さを保つ方法です。
タパス/苦行
苦行と聞くと、耐え難い苦しみの中の修行や、我慢するようなイメージを思い浮かべますが、現代的には【努力】すると理解しやすいでしょう。身体を苦しめる行為は【アヒンサー】に該当しますので注意しましょう。極端な修行をすることとは意味が異なります。
スヴァディヤーヤ/聖典読誦
- スヴァ/自己の
- アディヤーヤ/聖典などの学習
から成り立つ言葉です。
ヨーガでは、ヴェーダ聖典などのヨーガにおける聖典を学習することです。
- 人生の智慧
- 心得
- 指針
日課として学習することにより煩悩に気づきを得、それを弱めていく行為のことを指します。
イーシュバラ・プラニダーナ/自在神への誓願
献身の生活とも訳され、
- 人
- 物
- 無機物
上記のものも含め、全てのものへ感謝の気持ちをもつことです。行者の場合は心を統一して三昧の境地に入ることを目的とし、その補助的手段ともされています。
ここまでが【アーサナ】と【プラーナーヤーマ】の前段階、準備段階とされる項目です。ヤマ・ニヤマの1つを実施すると、その他も自然と行われることになるといわれています。まず日々の生活からできることから意識して、コツコツ日々実践していくことが勧められます。
アーサナ/坐法
一般的に行われているヨーガがこのアーサナです。柔らかくなることが目的ではなく、瞑想を深めていくために安定して快適な肉体を作っていく段階です。
(※アーサナについてもう少し詳しい内容は、以下をご参照下さい)
プラーナーヤーマ/調気
- プラーナ/生気・呼吸・生命エネルギー
- アヤーマ/停止・拡散・留める
要は、エネルギーのコントロール方法です。呼吸によって取り入れた「プラーナ/エネルギー」を身体内に留め、身体中全体へ拡散することによって、全身をエネルギーを満たします。
(※プラーナについては以下をご参照ください)
プラティヤハーラ/制感
感覚器官が外界の対象物によって惑わされないようにコントロールすることです。その為に意識を内側に向け、客観視をしていきます。感覚の意識化をしていく方法です。
(※ストレスの過敏に反応しない方法については、以下をご参照下さい)
ここまでが準備段階であり、ここから内的部門に入っていきます。
ダーラナ/精神集中
これ以前の段階で諸感覚器官はコントロールされた状態です。そこから心をある特定のものへ集中、結びつけておくことですさせることです。
(※諸感覚器官は、人間馬車説に含まれる器官です。人間馬車説については、以下をご参照下さい)
ディヤーナ/瞑想
ダーラナによって一点に集中した意識がさらに深く、拡大していくことです。他の対象物にそれることはなく、意識的にせずとも、集中が深まった状態です。
(※瞑想については、以下をご参照下さい)
サマーディ/三昧
- 三昧
- 結合させること
- 深い集中
と訳されます。心を何かに集中させた結果、とても穏やかな安定した状態に至ります。またヨーガの目的とされているのが、この【サマーディ】です。瞑想がさらに深まり、自他の隔てがなくなっていった状態のことを指すとされています。また【サマーディ】とは目標であり、【カイヴァルヤ/独存位】の中で生じるとされています。
まとめ
- はじめから【三昧】どころか1点に集中することも難しい
- 数時間座り続けることも困難な為に、アーサナによる肉体の強靭さが求められる
- 【ヤマ】【ニヤマ】の実践により身体と心への関心を深める生活が勧められる