本記事では、以下の内容について解説しています。
- ストレスとは何か
- ストレスマネージメントとしてまず抑えておくべきこと
- ストレス源へのアプローチ方法について
- 一般的なストレス解消法について
- 単純なストレス・マネジメントを【ヨーガ】が超越している理由について
現代社会はよく【ストレス社会】と称され、ストレスはいくらシャットアウトしようとしても逃れることは決してできません。【ストレス・マネジメント】として近年話題となっている瞑想においても、外部からのストレスに意識を捕われないようにしたり、耳栓をしても瞑想の坐を解けば、現実のストレスフルな環境が私たちを待ち受けています。よって、ストレスは、滅したり、避けたりする対象ではなく、共存するという選択をしない限り、私たちにストレスを克服する生活はあり得ないというわけです。
繰り返しになりますが、ストレスはなくす対象ではなく、状況や反応に【気付き】上手に付き合っていくのが【ストレスマネジメント】のコツです。単なるストレスマネジメントに収まらず【伝統的ヨーガ】または、これをもとに改良された【ヨーガセラピー】がいかにストレスマネジメントに適しているということも説明します。
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ストレス
【ストレス】は悪いことだけではなく、喜ばしい近親者の結婚や子どもができることなどもストレスの原因となります。毎日を快適に過ごすためにもストレスの正しい理解が必要になります。
【ストレス】とは、「外部刺激を受けた時に生じる緊張反応」のことです。緊張状態は、一定の時間がたてば解除されれば問題はありませんが、解除されることなく継続される緊張刺激が非常に問題です。このストレスが慢性化すると、まるで人は順応するかのように異常を異常と気づく力が鈍感になってしまいます。
ストレスの要因
- 環境的要因:騒音や天候
- 身体的要因:病気や睡眠不足
- 心理的要因:不安や悩み
- 社会的要因:人間関係や仕事の忙しさ
よって、「日常生活の変化=刺激」がストレスの原因になるということです。日常の出来事のほとんどがストレスになるということが理解できます。
生理学者【ハンス・セリエ】は、【ストレス反応】について以下のように言っています。
「生体が、ある出来事に遭遇した時に、初期の段階では、その出来事に対して戦うか逃げるかするための体の準備を整える(ユーストレス)ことから始まり、その次の段階で、特異的ではなく、系統発生学的で定式化された生体の反応パターンを示すのがストレス反応である」
もし、その人物がストレス反応を和らげる手段である「戦うか逃げるか」の方法を知らない場合には、そのストレスは、心身相関の症状や疾患を引き起こすようになります。【ストレス】は全てが悪者ではなく、時には人体に良い影響を与えるストレスも存在します。セリエは、ストレスをユーストレスとディストレスの二種類に分けています。
ユーストレス
喜ぶや心や健全な衝撃や種々の愉快なレクリエーションや、楽しみのためにするスポーツなどから生じてくるような、健全で欠かすことのできないストレスの事を言います。
ディストレス
いかなる種類ものにしても心身に継続的に加えられてくる緊張感や、希望のないままに怒りや欲求不満、緊張状態などに関係するストレスを指します。ストレスとは、人間の生理機能に与えられた厳しい要求に対する反応だと言えます。
ストレス反応
現代医学ではストレスを、「神経・内分泌系」「神経伝達系」における不調和という肉体次元の問題として捉えています。しかし、ヨーガの立場では、激しい好き嫌いの思いが感情的な不調和を形成し、この不調和が【生気鞘】中の生気の【不調和】を生じさせ、次は【食物鞘】に種々のストレス関連の疾患や危険を生じさせると考えます。つまり、善悪を知的に判断するのではなく、好き嫌いといった感情によって触発された種々の欲望や行動の生じてくる源は、【理智鞘】の機能不全であると考えられます。しかし、さらに微細な鞘である【歓喜鞘】が身体の最も微細な部分を形作っているとヨーガでは考えています。この鞘はストレスからの影響は全く受けないと考えられています。
肉体であろうと心理ストレスであろうと、ストレスの種類に関係なく、私たちの身体には生理的反応として現れてきます。これが【ストレス反応】と呼ばれるものです。
ストレスの原因
ストレスは人体へ様々な影響を与えます。嫉妬や恐怖、心配、憎しみ、怒りなどの一時的なストレスまたは記憶の中に深く印象を持続させる長期にわたるストレスもあります。これを【ヨーガ】の理論で解釈すると、【理智鞘】の【無知さ】によると考えられます。同じ言動でも、人によって捉え方は異なります。これは人の【認知】の作用によるものです。
(※病気の根源である【無知さ】については、以下をご参照下さい)
現代のスピード社会では、ストレスの原因は複雑化しています。肉体的なストレスであっても、心理へ影響します。心理ストレスは個人の理智による判断によって、ネガティブ/ポジティブに捉えます。ヨーガによる【ストレス・マネジメント】を理解するためには判断主の理智を評価することが必要になります。
【悩み】がストレスとなる
世の中の【悩み】は人間関係に集約することができます。よって人間関係をうまく築くことができない=ストレスになります。人である限り、他者との調和を保った生活ができるわけですが、人同士の摩擦によって生まれるのがストレスです。この意味から「人間関係を上手に対処すること」が【ストレスマネジメント】と呼ぶこともできます。これは、【アシュタンガ・ヨガ】の対社会的次元での自己制御方法である【ヤマ】【ニヤマ】において語られています。
(※【アシュタンガ・ヨガ】については、以下をご参照下さい)
適度なストレスは、人体のパワーとなりますが、過緊張を招き心身に悪影響を及ぼすストレスが慢性的に続き、最終的に肉体の症状として顕現とする病があります。いわゆる【心身症】です。
(※【心身症】については、以下をご参照下さい)
人間関係は避けることのできません。職場や家族関係は、慢性的なストレスを受ける可能性が高い環境因子です。改善できるのであれば改善したいですし、健康を求めるのであれば人間関係を円滑にする方法を建設的に考えるのが良いと考えられます。同じ状況や言動であっても相手が誰かによって異なってきます。これは上記しましたが、ヨーガでは【理智】と呼ばれる認知器官による作用です。この認知機能を正しく機能するようにすることが、ヨーガによる【ストレスマネジメント】です。
一般的なストレス解消法
一般的なストレス解消法を検索してみると、以下が見つかりました。
- 森林浴
- 岩盤浴
- カラオケ
- 買い物
- 好きなものを食べる
- 喫煙
- 飲酒
- 絵を描く
- ヨガ
- ひたすら寝る
一般社会の生活では常に緊張している方が多くいますので、副交感神経を優位に働かせる活動で、身体に害を及ぼさない方法であればOKだと考えています。
ストレス解消/対症療法
ストレスが溜まっては解消するを繰り返していても、常にリラックスする必要性があり、いつかは日常生活に息苦しさまで感じてしまう危険性もあります。耐えていられるうちはいいですが、肉体の症状などに出現してしまうと仕事をすることも、人と関わることをも控え、人から遠ざかってしまいます。ストレス解消は、今や社会問題となっています。肉体に異常を感じる度に対症的に実施していてもキリがありません。日頃からのセルフチェックとケアによりストレスの反応に気づきを得て、その都度対処していく力を持っていることが今後は望まれます。
過度なストレスによる体内の生理学的変化
ストレスによる刺激が【視床下部】【下垂体】に伝達し、【副腎皮質刺激ホルモン】が分泌され、アドレナリンとコルチゾールが放出されます。ストレス反応には2種類あり、 交感神経優位の防御反応/【闘争逃走反応】と副交感神経優位の行動制御をとります。下記が人体に生じる変化の例です。
ストレスの集積
ストレスを受けるとグルコース(ブドウ糖)がたくさん分泌され、血糖値が上昇します。血糖値上昇により、膵臓のインスリン分泌を促し、血糖値を下げ、平常値にしようとします。いわゆる【ホメオスタシス】です。
(※ホメオスタシスについては、以下をご参照下さい)
従って、常にストレスを受け続けると膵臓が疲弊し、機能不全となった結果、インスリン分泌が低下し、【糖尿病】となります。このように【心身相関疾患】は、内臓の働きを支配している【自律神経】の働きがバランスを失うことに起因します。この【ホメオスタシス】に乱れが生じるとすべての臓器の機能に障害が生じます。現代人は【視床下部】の働きが過度のストレスにより、無自覚のうちに敏感になり過ぎていると言われています。よって、【視床下部】への介入が必要になってきます。ヨーガセラピーのストレスマネジメントでは、意図的に過敏になり過ぎている体内組織【視床下部】をリラックスさせていくことを狙います。
ストレスに強いは良いことか?
ストレス環境においても非常に強靭な心身によって正常を保つことができる人はいます。ストレス耐性が高いと言われる人物ですが、マネジメントがうまくできていればよいですが、単に「耐性が高い」もしくは、「身体の感覚に鈍い」可能性があります。耐性は高くてもいつかは破綻します。よって、「過度なストレス」に強いと呼ばれる人も考えようで質を確かめてみないと何とも言うことはできません。身体感覚が鈍い場合は問題があります。
ヨーガセラピーにおけるストレスマネジメント
ヨーガセラピーのストレスマネジメントでは、意図的に過敏になり過ぎている体内組織【視床下部】をリラックスさせていきます。狙いの要点は、
- 意識を鋭く覚醒させる
- 心の散逸を涼める
- 意識の沈滞状態を確認する
介入方法の手順は、【人間五蔵説】に基づいたアセスメントにより、粗雑な肉体から微細な感覚、心へとアプローチしていきます。最終的には【理智鞘】のトレーニングを実践していきます。
(※人間五蔵説については、以下をご参照下さい)
外側の鞘から順番にアーサナ、呼吸法、瞑想によって各鞘での感覚を高め、つながりを強めていきます。
肉体次元で感覚を鋭くさせる
◇食物鞘
- 筋肉の緊張と弛緩
- 血流、血圧、脈拍、心臓自身の鼓動、これらの同調感覚
◇生気鞘
- 呼吸の変化:ゆっくり、調和がとれる。
心理次元で感覚を鋭くさせる
◇意思鞘
- 神経の感覚を感じる:「ア」「ウ」「ン」の響きの広がりを感じ、音に共鳴させる
◇理智鞘
- 心理次元で感覚を鋭くさせる方法
- 観察力、想像力:イメージトレーニング
- 感性を鋭くさせる:現代の教育では欠落している部分。特に教育が必要な要素
◇歓喜鞘
- 知力を鋭くさせ、潜在意識内の葛藤を調整を目指す
- 【理智鞘】による機能で【瞑想/内観】を用いて記憶の再認知を試みていくことで、記憶袋である心素を浄化をします
まとめ
- 【ストレス】は、無くすのではなく、共存する対象であるという理解がまず必要
- 【ストレス】は、自ら作り出していることに気づくことが必要
- 【ストレスマネジメント】とは、生活から切り離すことのできないストレスをコントロールし、時間を有効に使う方法論
- ストレスを気づくには、何にストレスを感じるのか、具体的なシーンや言動を意識して、時にはそこから身を避けるような行動が重要である